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④食の地産地消

5つの事業④食の地産地消

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食の地産地消

西谷地区の農村部では、高齢化と後継者不足により、休耕田が年々増加し、緑豊かな田園風景が失われてきている。他方、中谷・東谷の新興住宅地には消費者が多く、家庭菜園を楽しむ高齢者も多い。近接する阪神都市部でも高齢化は進んでおり、農業に興味を持つ都市生活者は多く存在する。このような状況のなか、特定非営利活動法人元気ファーマいながわは農家から休耕田を借り、それをボランティアで開墾・整備し、市民農園を運営している。同法人メンバーは自分で育てた野菜を食べるだけでなく、道の駅いながわ等で販売し、それを各種イベントや学校給食・飲食店等に提供し、子供たちの野菜づくり体験プログラムや野菜づくり講座を開講している。兵庫六甲農業協同組合も市民農園を支援しており、宝塚すみれ発電のソーラーシェアリングの市民農園を利用する甲子園大学栄養学部フードデザイン学科は、農産品の生産だけでなく、地域色を生かしたレシピ開発を学科活動として取り組んでいる。これらの活動に都市住民を惹きつけ、都市部と農村部の連携を図ることにより、農地や環境の保全を進めることができる。また、このように生産と消費をつなぐことにより、食の地産地消を進めることができる。

現在の活動と実績

市民農園の利用者数と面積の増加
・食の地産地消分野に関しては、阪神地域の「農」と「食」の魅力と消費者をつなぐ「阪神アグリパーク構想」に代表されるように、地元の農産品をプロモートする活動がすでに多くの団体により実施されている。したがって、本事業ではこれらの分野は割愛し、農村部と都市部の住人間の橋渡し的な役割を果たしている市民農園に着目し、その利用状況等を調査し、その活性化に向けた方策について検討する。

地元農産品の消費(流通)量の増加
・地元の農産品の消費量がどれだけ増えているか、官民の入手可能なデータを調査し、本事業の指標とするか検討する。

事例紹介
食をベースとした地産地消ネットワークの構築事例【インタビュー】

兵庫県全域をカバーし地域密着型の共生社会の実現を目指す生活協同組合コープこうべ
北摂里山地域(東谷中谷西谷地区)を含む阪神地区を管轄されている第1地区本部 本部長 前田裕保氏とマネジャー 黒木翔維斗氏にお話をお聞きした。
ーよろしくお願いします。
早速ですが、「食の地産地消」の取り組み事例を教えていただけますでしょうか?
前田氏:よろしくお願いします。
尼崎の3大伝統野菜ご存知ですか?

ーすみません、全然分かりません。
前田氏:「武庫一寸(むこいっすん そら豆)」「尼藷(あまいも さつまいも)」と「田能の里芋(たのう 里芋)」です。
尼崎市では市をあげて地域の特産に育てたいと力を入れておられます。

その中で、地元のまちづくり協議会をベースに、「園北ファーム」という団体が立ち上げられ「田能の里芋」の栽培と伝承に取り組んでおられます。
代表されています内田大造様は、20年近く活動を推進してこられたすごくパワフルな方で、園田地域で増加する耕作放棄地を積極的に取り込み里芋の栽培を拡大されています。
去年は2000株だったものが今年は5000株にと確実に収穫量が増加しています。

内田様から昨年の10月に、コープこうべでも取り上げてもらえないかとのお話をいただきました。
会合等では活動を拝見していましたが、特にというお付き合いはありませんでした。それでも何かご一緒できればと思っていましたので、現地も拝見し色々意見交換を経て、私どもの店舗で取り扱うこととなりました。
具体的には尼崎市のコープ園田での販売となり、予想外というと失礼ですが非常に好評でした。通常1か月の販売する量をなんと3日間で完売したのです。午前中に用意した量は全て売り切れて、あわてて園北ファーム関係者が車で5分の畑に行き、掘り出してまた販売するような盛況ぶりでした。究極の地産地消ですよね。
昨年は園田の店舗のみではなく、近隣のコープ武庫之荘や大規模ショッピングモール内のコープつかしん店でも取り扱いましたが、園田の店舗には遠く及ばず、やはり地域の食材と地域の結びつきは強く大切なものだと感じました。

内田様の活動を拝見していますと、地域の伝統野菜を守ること、耕作放棄地を農地として守ることに、世代を超えて人が参加し、助け合い支え合いの場が生まれていることを実感しました。
活動が注目されコミュニティー自体も大きく成長しています。この活動に触発されて他の2つの伝統野菜を守る活動も活性化され、広がりのある相乗効果が生まれています。

私どもも組合員の皆さんと、耕作地の一部をお借りして耕作をお手伝いするとともに、子供たちの体験学習等にも活用しています。農作業をする環境、故郷と言ってもいいかもしれませんが、そのような環境を子供達に体験してもらう場を作っていきたいと思います。

ー貴組合の強み「食」を中心に地域のコミュニティーが強化されたいい事例ですね。
貴組合のビジョン「ターゲット2030」では、「地域の資源を循環させるコーディネーターとなる」ことを標榜されていますが、この取り組みについてお聞かせいただけますか?



黒木氏:
そうですね、最近の事例では、尼崎のサークルの皆さんが、市川町にある棚田を借りて農業活動を行なっておられたんですが、コロナ禍でバス移動が難しくなりご相談を受けました。
そこで、私どもが、川西市のコープうねの店に近い笹部地区に農地を持って農業活動をされている団体をご紹介し、繋ぐことで活動が継続された事例があります。
来年は宝塚市の西谷地区でお借りすることになる計画です。

ーお話をお聞きしていますと、恐縮なんですが、主体としてではなくあくまでもサポートされているんだなと感じました。
1歩踏み込んで主体的に取り組むという点ではいかがでしょうか?

前田氏:私どもは、創業より「愛と協同」の精神が全ての活動のベースです。
主体的に動くことで、活動範囲が狭くなり広がりを欠くことは避け、広く共助を促進し、活動の自立をサポートすることに徹しています。

活動の自立をサポートすることについては、「地域高齢者の介護問題」が大きいのではないかと考えています。
高齢者が安心して食べて自立して生きる環境を、地域が支える仕組みですね。

ービジョン「ターゲット2030」で、注目すべき環境変化と捉えられているところですね。

前田氏:次に迎える超高齢社会では、健康寿命を伸ばさなければなりません。そのためにはしっかり食べないといけない。
兵庫県栄養士会と連携し、食を学ぶことそして食材をその場で購入する場を作ることで、地域の高齢者問題の解決に貢献したいと考えています。

また、地域の農作業に関わることで生まれてくる事例もあります。
私どもは、宝塚市の引きこもり気味の人々をサポートする団体と、農作業を行う場作りを協業していました。
黙々と農作業に取り組み、収穫した作物をおいしいと言って食べる、食べてもらう体験を通じて、社会とのつながりが生まれていると実感しています。

ーなるほど、食をベースに地域の問題を地域で解決する、食の地産地消ですね。
お話をお聞きしていて、新しい農業の担い手、新しい農業の役割の可能性を感じました。

黒木氏:作り手に留まらず、利用者の責任についても伝えていかなければなりません。
ちょっと高くても地域で生産した食材を買うなど消費者が何を選択するかは、これからの食を守る意味でも大きなポイントになると思います。
作ると食べると学ぶを一体として提供し、エネルギー資源も含めて、多面的に地産地消の大切さを取り上げています。
場作りとともに学習コンテンツも少しずつ充実させています。

前田氏:創業時には明確な課題がありました。食の安全安心を守ることが私たちの命題でした。
しかし、今は、食の安全安心が常識になっています。社会的にはある程度クリアされていると考えられていますよね。
社会が持つ課題が多様化してきているのが今ではないでしょうか。
高齢者が買い物に行けないとか、貧困の問題でそもそも買えないとか、食とつながる生活の場に今の課題が生まれていると思います。
食とつなぐという意味では、高齢者と店舗をつなぐ「買いもん行こカー」や継続してご愛顧いただいています「宅配」の需要は急増しています。しかし、「つなぐ、つながる」という意味では、もう少しきめ細やかな対応が必要です。
高齢者の皆さんがコミュニケーションの場を求めている、じゃあということで、店舗の店長レベルで判断して、実際に空きスペースに集いの場を作ると、集まった人たちがお饅頭を買って食べながら会話を楽しんでおられる。
この事例を見ていますと、これから一線からリタイアした高齢の方がどんどん増加し、今まで経験していない新しい地域でのお付き合いが必要となるだろうなと予想しています。「つなぐ、つながる」をどうお手伝いしていくか、地域に根付いている私たちの出番だと思っています。

ー方針や施策があって実施しているというよりも、地域の課題に現場が取り組んでいるイメージでしょうか。その場合、課題はどのように吸い上げられるんですか?
黒木氏:その地域の組合員の皆さんのお声です。
宅配の担当者や店舗の職員が聞くお声もありますし、総代会という最高議決機関でのお声もあります。そのお声を受け止めるのが店舗や地域を統括する地区本部になります。

前田氏:若い人たちの声をもっと取り入れていきたいですね、現場で接している私たちの役割だと思っています。
最近では、尼崎市と一緒に私たちが主体となって市営住宅の空き家を利活用する居住支援に参加しています。若いシングルマザーの要求に応えた事例です。
またオールドタウンは、どうしても外から流入する人が多くなっていますので、賃貸料をサポートすることで集いの場を作り、孤独に陥りがちな若い世代のコミュニケーションをサポートする活動にも取り組んでいます。

これからは、脱オールドタウンを目指して働く場の創出や、サポートする組織を束ねて弱い立場の人たちを守り、課題を共有する人たちが集まることで、地域自体が強くなる取り組みにも挑戦したいと思っています。

ー安全安心な食を安定的に供給する役割から、地域の課題解決を地域のリソースを、食のつながりを活かして循環させることで解決する役割に変化しているわけですね。お聞きしていますと、利益を訴求するイメージではないですが。
前田氏:消費生活協同組合法、いわゆる生協法により、私どもは営利を目的としていません。
地域に溶け込み、地域の課題に取り組み解決に寄与していくことで、私どもの存在意義が生まれると考えています。

先程お話ししました高齢者、孤独な子育て、居住問題、不登校、貧困など、取り組むべき地域の課題解決には、創業時に掲げた「愛と協同」の精神がまさに今こそ必要とされていると強く感じています。

「コープで買い物することが地域課題の解決につながる」そう言っていただけることが私たちの目標です。まだ少し遠いですが、この目標を目指して、これからも地域の中で頑張っていきたいと思います。

ーありがとうございました!

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