一般社団法人全国ご当地エネルギー協会 公開講演会&セミナー
■日時:2020年1月15日(水) 開演13時より16時30分
■場所:「ラッセホール」地下1階「リリー」
第一部【講演会】
「電力独占の終わりと地域自立の時代へ ー関電問題を通して考えるー」
講師:古賀茂明氏 (古賀茂明政策ラボ代表・元経済産業省の改革派官僚)要約
・オーストラリアの森林火災では10万Km2(日本の4分の1)が焼失している。これは気候変動ではなく、気候危機である。
・グレタさんの主張は、経済から倫理の問題を提起した点が評価できる。
・カリフォルニア州の山火事は、気候による影響とかではなく、実は送電線の老朽化が原因だった。電力会社に巨額の賠償金が発生するので、風が強い時は電力供給をストップさせる事態になっている。
・ドイツでは、再エネ発電が化石燃料による発電を上回っている。ドイツは脱原発を宣言しているが、日本は立場が明確でなく、太陽光や風力発電が成長しにくい。日本の某企業のホームページでは技術により、クリーンで高効率な石炭火力発電を運用していると掲載しており、その姿勢は疑問である。
・2018年は日本が、気候変動による災害と考えられる影響を受けた最大の被害国なのに、当事者の日本は、どことなく気候変動に対して、無関心なところがあり、世界が不思議に思っている。
・2011年10月に日独交流150周年記念の日独賢人会議では、気候変動について、ドイツは技術で克服、日本は自然エネルギーで克服するというのが文化的背景から考えられると言われていたが、実際はその逆になっている。
・21世紀は農山漁村にエネルギー産業の柱が復活するべき。かつて、日本の農山漁村は、製薪炭業がさかんで、エネルギー産業が成立していた。普通の木材利用より薪炭の方がはるかに多い時代があった。
・経済の発展の条件には、以下のような変化が生じており、その点で日本は先進国とはいえない。
①(企業より)人を大切にする。人件費は高くて当然である。②自然・環境を大切にする。持続可能性と再エネはその柱となる。③公正なルールが執行される国へなる。不正や既得権益の排除が必要である。これらを克服し、再エネを推進していくことが、日本が真の先進国になる道である。
・電力業界の問題では、原発マネーが、総括原価方式(営業費+事業報酬)で利益が保証されているので、高いコストをかけても良いという構造欠陥を誘発している。
(会場Q) これからは、国家というより、小さなコミュニティ単位で考えた活動が重要になると思うが、その際、個人が持つべきフィロソフィーは?
(A) 宗教の世界で言う、与えるという価値観が重要ではないか。 人の欲望の限界もあるということを認識し、人の役に立つ、与えるという前提で世の中の役に立つという考えを、個人から国全体に広げ日本が尊敬されることが安全保障にもなる。つまらない経済大国とかのプライドを捨てることが必要だ。
第二部【セミナー】
「持続可能な社会をめざす地域循環共生圏のつくり方」
パネラー:
兵庫県 菅 範昭 氏(農政環境部 環境管理局長)
コープこうべ 竹中 久人 氏(開発・施設管理、環境推進 執行役員)
宝塚市 古南 惠司 氏( 環境部 環境室 地域エネルギー課 課長)
神戸新聞 辻本 一好 氏(論説委員)
株式会社宝塚すみれ発電 井上 保子 氏(代表取締役)
モデレーター:公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 前田 利蔵 氏(関西副センター長)
各パネラーの取り組みのプレゼンを受けて、パネルディスカッションが行われた。要約
・北摂には、炭、薪の文化があり、ピザ窯等に利用され、それぞれの用途で必要とする木の種類が異なる。これらを表に整理した人が昔いたが、次に生かせていない。これには行政、企業等では3年毎に人が交代するといった問題があった。今回の北摂里山地域循環共生圏の取組は、人材育成の面でも期待したい。
・川西市黒川は服部先生によると日本唯一の里山であり、茶道に使われている単価の高い菊炭がある。しかし燃料として薪やチップは利用されていない。
・宝塚市新都市構想があって、県有林が西谷地区にある。ここでは平成28年に賦存量調査を実施した。現状としての森林資源活用は西谷仕事人プロジェクト数人で細々と丹波立杭焼に提供しているくらいである。現状では、近隣の猪名川、川西市との横のつながりがうまく構築できていない。
・コープ会員に対して、再エネ利用者を増やすには価格が安いことが、まず第一条件になっている。しかしそれだけでなく、コープの再エネを使うことで世の中が変わるという意識を持ってもらうようにしたい。消費者の皮膚感覚を大切にしたい。
・社説でも言及しているが、気候変動問題には、防災の視点を入れたい。防災とエネルギーの問題は相互に関連している。森林資源を適切に管理していくことが、防災面や自然エネルギー活用にも繋がる。
・地域の人が意識をもって、小さいところから徐々に広げて横展開するようにしていきたい。
(会場Q) エネルギー問題は、コンシューマと企業では役割と負荷、責任は大きく違うと思う。コンシューマが持つべき役割は何か?
(A) 企業と消費者との関係で言えば、消費者には自らの行動が結果的に跳ね返ってくることを意識してほしい。消費者の肌感覚になっている出来事と消費行動を結びつけることで、環境に積極的に寄与することが可能であり重要だ。現状は企業が環境ビジネスを創り出しているが、消費者が主体となって国と企業をサポートする形がよいのではないか。
豊かな人間生活と経済成長のバランスは取れるのか?取ろうとしているのか?「成長の限界」までに残された時間がどれ程あるのか?環境問題解決への議論と行動の現在地点は、確たる地図もなく混沌と未知の迷路の中で、焦燥を積み重ねているのかもしれない。(T.Mi)