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インタビューず

公益財団法人 地球環境戦略研究機関 プログラムディレクター 小嶋 公史 氏


小嶋 公史(こじま さとし)氏
公益財団法人 地球環境戦略研究機関 関西研究センター 副所長
プログラムディレクター
東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(工学修士)、英国ヨーク大学環境学部博士課程修了(Ph.D.)。1994年より株式会社PCIにおいてコンサルティング技師として政府開発援助プロジェクトに従事。ヨーク大学で博士号取得後、2005年より公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)勤務。主に東アジア地域の持続可能な開発に関する定量的政策分析に従事。専門は環境経済学、環境・開発政策評価。上席研究員。


気候の急激な変動を、まさに肌に感じる暑さが身に沁みる夏の神戸。
人と防災未来センターのガラス面をぎらつかせる太陽を見ながら、隣接する公益財団法人 地球環境戦略研究機関(以降IGES)関西研究センターに小嶋プログラムディレクターを尋ねました。

ーよろしくお願いします。早速ですが、IGESとはどのような組織ですか?一言でお願いします。
よろしくお願いします。一言はむずかしいですね(笑)。
環境省を中心に日本政府のイニシアティブで作られた研究機関で、日本を含めたアジア太平洋地域の持続可能な開発の促進に貢献する、環境だけではなく経済の側面も含めた実践的な研究を行う機関です。
特色としては、国際色が豊かであるという点かと思います。国外の研究員が3割以上を占めています。
国内からだけではなく、世界銀行や国連環境計画など国際機関からの委託も受けて研究しています。

ー「持続可能な開発」というワードがありましたが、持続可能とはどのような状況を言うのでしょうか、また開発とはどのような開発でしょうか
「持続可能な開発」というワードが提唱されたのは、1992年のリオの地球サミット(国連環境開発会議)です。
持続可能とは、経済成長を持続させると言う意味で成長基盤の持続と捉える方も多いですが、私は生存可能な状況を意味すると考えています。
今の経済成長、発展パターンは生存基盤の破壊をもたらしています。この発展パターンに固執して不可逆的な環境破壊が進めば生存が脅かされる、その危機を回避するために考えられたのが「プラネタリーバウンダリー」の理論的視点です。経済を含めた開発の許容点を見極めること、許容点を越えさせないことが必要であるという考えです。

ここで言う「開発」は、貧困撲滅のための開発を意味しています。
この貧困撲滅のための開発が許容点を超えずに行われることが大切です。野放図な経済の拡大を目指す「開発」を意味しているわけではありません。

ー小嶋さんのおっしゃる「持続可能な開発」の定義は、社会全般に共有されていると思われますか
リオで国連が「持続可能な開発」打ち出した背景は、この考え方で間違いないと思います。
しかし、実際には捉え方はまちまちです。SDGsもそうですが、国際機関で議論されるものは、先進国や途上国など思惑の異なる多くの国の賛同を得るために、解釈の幅を残した緩いものにならざるを得ないのが現実です。

1972年のストックホルムで初めて開かれた国連開発環境会議では、参加国が開発か環境かの二項対立の図式でした。
二項対立を廃し、対立から融合を生み出すある意味玉虫色のワードが「持続可能な開発」です。

この対立色を軽減するという意味では、環境施策の中で負け組を作らない、公正な移行、いわゆるJust Transitionの考え方も主流化しています。IGESとしてもこういった側面についても研究に取り込んでいます。

ープラネタリーバウンダリーのボトムラインをどう守るかについては、どうお考えですか
かなり危機的な状況だと思います。
野放図に資源を消費することは出来ませんので、今のような形での経済活動は持続不可能です。
ではどうやって制約を作るのか、そこがポイントになります。カーボンプライシングなど制約の手法は開発されていて、スウェーデンやスイスが野心的なカーボンプライシングを導入するなど一定の実績を挙げています。
しかし世界規模には普及していません。
制約ありきの考え方が当たり前にならないと次のステージには行かないかなと思います。そこで初めてパラダイムシフトが生まれると思います。

ベースは、我々の価値観の問題だと思います。
社会総体としての価値判断に制約というものが意識されていません。
昔の社会は、共有地での資源の使い方を制限したり、一定以上捨ててはいけないとかの制約を、社会全体というか社会人やコミュニティーの自発的なタブーや道徳として持っていたのではないでしょうか。
現代ではその束縛がなくなったことで、制約を受け入れない社会になったことが一番の問題だと思います。便利さの追求の結果ではないかなとも思います。

どうすれば制約を受け入れるかは、やはり凄まじい外的な何かが出てこないと難しいと思います。
大きな災害とか危機ですね。しかしそんな事が起こってはお終いですから、教育、なかんずく次世代の教育が重要になります。酷暑を経験するから気候変動を考えるのであって、そのような経験なしに気候変動を想像することは難しいですよね。
若い人たちが問題を体感体験する場を作ることが大切だと思います。

融合する社会環境や知らない社会を知る体験する場ということでは、個人が感覚的にわかるサイズで、生活感をベースにした文化的な共通点もある「地域循環共生圏」は正にその場になるのではないかと思っています。

ー繋がってきましたね。
私たちの研究は、個別の課題に取り組んでいる場合が多いですが、より関連性を重視した統合的な視点が必要な共生圏は面白い研究だと思っています。
コンセプトは重要で素晴らしいものですが、具体的な方法論を作り出す途上にあると考えています。

IGESでは、「北摂里山地域循環共生圏」が緒ですが、その後「佐渡市地域循環共生圏」の構築事業や、八戸市でも地域循環共生圏に取り組んでいます。色々な学びがありますので、北摂里山でも生かしていきたいと思います。

「日本一の里山・北摂里山フィールドパビリオン」で、「北摂里山地域循環共生圏」を多くの人に世界の人に知っていただくために、私たちも取り組んでいきますので、よろしくお願いします。

ーありがとうございました!

ー「スマホを持たない主義」の小嶋副所長とは、脳とデヴァイスや便利さとマーケティング、
ーはたまた政治論まで幅広いお話をお聞きし、楽しいインタビューでした。
ー12月8日のトークイベントでまたお話をお聞きするのが楽しみです。
T.Mi

宝塚エコネット 代表 梶原 暢元 氏 

ひょうご持続可能地域づくり機構 事務局長 中川 貴美子 氏

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