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インタビューず

北摂ワイナリー株式会社 代表取締役 遠藤 薫 氏 

遠藤 薫(えんどう かおる) 氏
北摂ワイナリー株式会社 代表取締役
北摂里山文化保存会 理事

閉鎖されたケーブル黒川駅の近く、青い空と里山に抱かれたワイン畑が広がっています。
北摂黒川の地に、ワイン作りの夢を胸に移住された北摂ワイナリー株式会社 遠藤 薫 代表取締役に、お話をお聞きしました。

ーよろしくお願い申し上げます。黒川・ワイン・遠藤さん、どのように繋がるんでしょうか?時系列で(笑)。
よろしくお願いします。時系列は・・・長いですよ(笑)。
私は東京生まれの仙台育ちで、中学から大阪の吹田です。なので関西弁ネイティブじゃないんですけど、十数年かけてネイティブレベルになりました。

聞かれるかな?と思って用意してましたが(笑)、小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「なるほど・ザ・ワールドのレポーター」でした。

大学受験は村上春樹の影響で早稲田の文学部映画学科志望でしたが、2浪の末に受からなかったので、フリーターになりました。
海外に進学した同級生もいましたが、子どもの頃「なるほど・ザ・ワールドのレポーター」になりたかったくせに、当時は海外なんて怖い怖いと思っていたので、予備校時代のバイト先のご縁で、大阪北新地のシーフードレストランで働くことにしました。

初めての海外旅行は、二十歳の時に高校の同級生とハワイに行きましたが、その数日後には、ジャマイカに行くためカリブ海へ出発しました。その時たまたま訪れたキューバでカルチャーショックを受け、スペイン語に興味を持ちました。
以後、すっかり海外旅行にハマり、レストランでは2ヶ月めちゃめちゃ働いて、2週間海外旅行に行く、バブリーな生活を5年やってましたが、楽しかったですねえ。飛行機も大好きです。

ーワインまでは、まだまだですね。
レストランでワイン会の司会をする業務はありましたが、サラッと勉強する程度でした。

いつも海外旅行のチケットを買っていた某大手旅行会社の窓口で、私の旅程がマニアックすぎたせいもあったと思いますが、お願いした通りに手配されてないことが多々あって、「絶対、私の方が上手くできる!」と思ってその旅行会社に転職したんです。やってみたら、やっぱり天才オペレーターでした(笑)。

得意な仕事も職場の仲間もすごい楽しかったんですが、やればやるほどノルマがキツくなって。これ以上働いたら死ぬと思っていた時に、ちょうど映画のタイタニックを観て一念発起、旅行会社を辞めてスペイン語留学に行くことにしました。

安いスペイン語学校がたくさんあると聞いて、行先はグアテマラにしました。

ー中米ですか、ワインに少し近づいてきましたね(笑)。
いえいえ、全然近づいてません(笑)。

旅行会社で勤務しながら、週一ですが2年間スペイン語会話を習ってたんです。
でも、現地に着いたら、あいさつと1から10の数字しか言えなくて、大ショックでした。でも、その下地があったからか、3ヶ月ぐらいから急にスペイン語がわかるようになってきました。

グアテマラに4ヶ月いて、その後、中米全土を長距離バスで旅して、コスタリカでまた1ヶ月スペイン語学校に通って、半年間で、あー私スペイン語ペラペラや、と満足して日本に帰ってきました。

帰国後、結婚して豊中で暮らすことになり、子どもが生まれ、男の子二人を育てながら航空会社のコールセンターで10年働きました。
しかし、会社が地方に移転することになり、今度はインターナショナルスクールの事務室で働き始めました。

最初の5年ぐらいはむちゃくちゃ忙しかったのですが、この辺りで離婚して、仕事が落ち着いてきて、子どもの手も離れてきた頃、昔から憧れだった早稲田大学の通信教育課程に入学しました。

ところが入学したとたんまた仕事が忙しくなり、入学3ヶ月で体調を崩してダウンしました。

ーいよいよワインですよね多分
そうですね(笑)。
静養中、家でテレビの旅番組を見てたんですが、その時に映ったのが、スイスの世界遺産「ラヴォー地区の葡萄畑」の絶景でした。
その美しさに心を奪われ、「私もう葡萄畑に居たい!」と強く思いました。2017年8月、47歳の時でした。

農業なんてそれまで全く縁がなかったし、47歳にして本当にやりたいのか、気の迷いなのか、確かめることにしました。甲州勝沼のぶどうまつりに行ってみたり、岡山のワイナリーで短期バイトをさせてもらったり、学校事務の仕事を続けながら休みを利用して、一年ぐらいかけて、いくつかのワイン作りの現場に身を置いてみました。

仕事と大学の勉強で、一日12時間以上パソコンに向かう生活では、この先の健康に不安しかないと感じていたこともあり、屋外で、ワイナリーで、働きたい気持ちは固まっていましたが、いざ職を探すとなると、経験もない若くもない私を雇ってくれるところはありません。

誰も雇ってくれへんし、地元北摂にはワイナリーがないし、もう自分でやろかな、と思うようになりました

ーすごい跳躍力というか、実行力ですね。黒川にはどう繋がるんでしょう
学校事務の仕事辞めて、豊能町にワイナリーを作ろうとしていた人と一緒に活動することになりました。

しかし、一年半必死に頑張って軌道に乗せたとたん、意見が合わないと辞めさせられたので、あっけなく夢も畑も仕事も失いました。
高校生の息子がいる51歳のシングルマザーのゼロリセットはなかなかキツかったですが、その間、豊能町役場の方の勧めで、豊能町主催の農業研修「とよの就農支援塾」に通っていたのが、ゆくゆく黒川に繋がるきっかけになりました。

豊能町を離れることになる少し前に、とよの就農支援塾の同期の紹介で、黒川でブドウ畑をやってみてはどうかというお話をいただいていたので、それだけを頼りに、府県も違う、知り合いもいない未知の村、黒川へ単身やってきました。

当時の黒川の代表者お三方と話をする機会をいただき、めちゃくちゃ緊張しましたが、畑はたくさん空いてるからブドウやってみたら、とおっしゃっていただけました。ダリヤ園もお手伝いさせてほしいとお願いすると受け入れてくださり、黒川とのご縁が始まりました。2021年6月のことです。

しばらくは、本当に黒川でブドウ畑なんかできるんかなと不安な日々でしたが、ダリヤ園の作業がとても面白くて一生懸命やっていたら、次第に地元の皆さんも温かく接してくださるようになりました。生活のためのアルバイトを紹介してくださる方が現れたり、川西市役所の担当の方にもご尽力いただき、翌年の早春、川西市の農地バンク第1号で最初の畑を貸借契約することができました。皆さん本当に命の恩人です。

2022年2月22日、いずれ会社にしたいなら、私の生涯で一番ゾロ目の日に設立しようと思い、川西市商工会の創業支援制度を利用して、北摂ワイナリー株式会社を設立しました。

友人知人にたくさん手伝ってもらって、急ピッチで耕作放棄地を開墾し、春に苗木と譲り受けた成木の計220本を植えて、私のブドウ栽培が始まりました。

ラヴォーの葡萄畑を見てから紆余曲折、5年目の春でした。

ー来ましたねーワイン!今の目標地点と現在地はどの辺りでしょう。
最終的には、醸造所を持って、ボトルにして年間6,000本から10,000本生産できる規模のワイナリーにしたいですね。それまでは、他所のワイナリーさんにブドウを持ち込んで委託醸造させてもらう形になりますが、現在地はまだまだ、まともに樹を育てて、まともに収穫することが目標です。
畑も今は4ヶ所、計5反(0.5ha)ありますが、最低1haは必要かなと思っています。

耕作放棄地を開墾して「美しい」ブドウ畑を作るって、ものすごい重労働なんですけど、ものすごくやりがいがあります。近くの竹林整備をさせてもらって間引いた竹を支柱に使わせてもらったり、不要になったからと譲っていただいた農業用品もたくさん活用させてもらっています。
買わなくて済むものにお金をかけず、獣害フェンスなど肝心なものにはケチらず投資しています。
耕作放棄地を開墾すると、どこの畑からも大量のゴミが出るんですが、それも徹底的に拾い集めて処分しています。これはちょっと地球に良いことしてる気分になります。

醸造所にする物件も必要ですが、今はまだ目処が立っていません。
でも、ここまで来れたことが奇跡みたいなものなので、なんとかなるんちゃうかなと思っています。なるかな?(笑)。

振り返るといろいろなことがありました。
実際のところ今も夢と不安しかないんですが、夢も不安も考えたところでコントロール不能やし、今日はこれをやろうとか、今話してる人と楽しく過ごそうとか、コントロールできる「今」を良くすることに意識を向けています。

ブドウ畑は今年で3年目になり、今は毎日の畑仕事が楽しくて幸せですが、こんな畑を持って、こんな人生になるとは、虫も怖いし、お砂遊びも嫌いやった子どもの頃の私が一番びっくりでしょう(笑)。


黒川でワインを作る私の道はまだまだこれからですが、本当にたくさんの方に助けていただいて、ここまで来ることが出来ました。
これからも一歩一歩、確実に前を向いて、関わってくださる方々と楽しく歩んでいきたいと思っています。
よろしくお願いします。

ーありがとうございました!

ーなんとなく黒川でワインを作るって難しいんじゃないかと思っていましたが、
遠くの出来るじゃなく今作る今やるに力点がある、柔軟な強さを持つ素敵な人だなあと思いました。
ー北摂ワイナリー醸造の黒川ワイン白をキンキンに冷やして飲む日もそう遠くないと思います。楽しみですね。
T.Mi

能勢妙見山ブナ守の会 事務局長 植田 観肇 氏

宝塚エコネット 代表 梶原 暢元 氏 

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