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インタビューず

株式会社能勢・豊能まちづくり 代表取締役 榎原 友樹 氏

榎原 友樹(えはら ともき)氏
株式会社 能勢・豊能まちづくり 代表取締役
1977年生まれ、大阪府吹田市出身。
京都大学工学部地球工学科(資源工学専攻)を卒業後、英国レディング大学にて修士号(再生可能エネルギー専攻)を取得。民間シンクタンクにて脱温暖化2050プロジェクト、IEA PVPSプログラムなどの太陽光発電関係のプロジェクトに従事。
2012年6月に独立し株式会社E-konzal設立、代表取締役。関西圏を地盤に環境・エネルギー問題の解決に全力を注ぐ。
2020年11月より現職兼任。主な編著書:「低炭素社会に向けた12の方策」2009年、日刊工業新聞社

ーよろしくお願い申し上げます。
英国で修士を取られたとのこと、民間企業から独立され、コンサル会社と地域エネルギー会社を経営されておられますが、経緯といいますか今に繋がる流れをお聞かせいただけますか?

よろしくお願い申し上げます。
プロフィールにもありますが、京都大学では、資源工学という簡単に言いますと地下に何か建造物を作る工学を専攻していました、私はトンネルをやっていました。

ートンネルですか?
はい、大学院では高レベル放射線廃棄処分場の研究をと言われたんですが、どうしても再生エネルギーを勉強したくて英国に留学しました。
日本に帰ってきて、シンクタンクでは、太陽光発電など再エネのチームと国立環境研究所さんやIGESさんと脱温暖化2050プロジェクトなどの温暖化のモデル分析、AIMモデル構築に取り組んでいたチームの2つに所属し活動していました。私個人の役割としては計算よりももう少しマクロな将来モデルのシナリオデザインを設計したりしていました。

シンクタンクでは政府や官庁と一緒に動いていましたが、議論や構想、数字ではなく本当に社会を動かさないと温暖化は解決しないなと強く感じ、ローカルなプレイヤーと政策をつなぐ存在になりたいと思い独立しました。実践する事業者と政策立案者のコミュニケーションが取れていないので、両者をつなぐ、BRIDGING THE GAPが出来ればと考えています。

ー少し寄り道かもしれませんが、教えてください。将来モデルとしてのシナリオとして、「低炭素社会に向けた12の方策」に書かれているシナリオは2つ。活力、成長志向で、都市集中型個人重視の、より便利で快適な社会を目指す「シナリオA」と、ゆとり、充足志向で、地域分散型コミュニティー重視の、地産地消をベースとした必要な分を生産消費する社会・文化的価値を尊重する社会を目指す「シナリオB」がありました。面白いなと拝読したんですが、今どちらのシナリオに日本は進んでいると思われますか?
このシナリオについては活発な議論がありました。面白いことにどちらかの意見の方も同数程度おられました。グローバルなシナリオはAになると思いますが、日本ローカルではBの要素が大きくなるんじゃないでしょうか。どちかとも言えないというのが本音ですね。

ーありがとうございます。私は完全に「シナリオB」です(笑)。
コンサル会社を経営されていて、同時に地域エネルギー会社を立ち上げられた、自ら実践に踏み込んで行かれたのはどのようなきっかけだったんですか?
会社を立ち上げた目標は、環境エネルギー政策を実践者を巻き込んだ形で推し進めることです。政策とは、大きくは2つ、温暖化対策の推進と日本国外に流出しているエネルギー関係の20兆円を域内に留め経済活性化を実現することだと考えています。
会社を立ち上げてみると、公的な政策を考える立案する仕事の依頼が非常に多くて、思い描いていた実践までは踏み込めない状態が続いていました。
ちょうどその頃にあるセミナーで講師をしたんですが、たまたま地域新電力の講演をお聞きし、地域エネルギー会社のコンセプトにかなりショックを受けました。エネルギーで稼いでその利益で地域に貢献する地域を住みやすくするというコンセプトはすごく面白いなと思ったのがきっかけです。
講演された新電力会社とは、太陽光発電の余剰電力予測のアルゴリズムを開発したりお付き合いをしていました。その過程で、地域新電力会社の検討、フィージビリティスタディをいくつかの自治体で行なっていたんですが、能勢町、豊能町の皆様に積極的にご賛同いただき、進めようということになりました。地域の協力をいただく事業者として株式会社冒険の森様が手を挙げていただきましたので、会社設立となり、現在に至っています。

ー能勢・豊能まちづくりの仕組みを少し教えてください。
高齢化社会で、自治体に求められるサービス要求は大きくなっています。しかし、自治体の財源は減少しています。

                         ※:能勢・豊能まちづくり様ご提供パワーポイント資料

このアンバランスを軽減するためには、何らかの新たな財源が必要です。その財源を地域エネルギー会社が生み出す、簡単に言いますとそうなります。私どもがエネルギー、電気を仕入れ、自治体に供給することで、自治体外に流れていたエネルギー代金を域内に還流する形です。


ー要するに仕入れと売値の差額利益がどれだけ出来るかですね。
そうです。現状はみんな電力さんという、再生可能エネルギーを多く取り扱っている会社さんから電気を調達しています。契約上は、調達価格は一般社団法人 日本卸電力取引所 JEPXと連動する形となっています。
2町と売電契約していますので、この仕入れ原価が最大のポイントです。この価格が時間によっても市況によっても大きく変動しますが、今は寒波とコロナ禍でLNGの供給が入ってこない、韓国中国との競争もありで、異常値が続いています。まさに暴騰しています。日本では電力市場自体がまだまだ未成熟で制度設計含め成長過程にあると思います。
                        20200118時点JPEX_2021年01月19日受渡分の取引情報より転載

この山にどれだけ対応していけるかが直近の最大の課題です。利益がゼロであっても、少なくとも町内にお金が残れば地域の付加価値としての意義は大きいと思います。しかし、足元の状況では、なかなか厳しいですね。
とは言え、初年度である今年度は小売事業の安定化が目標でしたので、来年度は、新しいサービスも手掛けていきたいですね。合わせて、自家消費発電等再生エネルギーの仕組み作りにも投資していきたいと考えています。


                                     ※

ー北摂里山地域循環共生圏については、何かイメージお持ちですか?
先ほどお話ししましたが、いかに安定的にエネルギー、電気を仕入れるかが課題です。この点で、共生圏に属されている川西市、猪名川町と能勢町、豊能町で運営されています国崎クリーンセンターの廃棄物発電は、ぜひ連携させていただきたいと期待しています。
                                      ※

事業を安定化するためには、ポートフォリオをうまく組むことが大切ですので、連携が必要になってきます。しかし連携を進めるにも実現した見える形の成果がなくては連携していただけません。また他社に容易に置換されない強みを作ることも重要ですので、尖った存在にならなければなりません。
違い強みという点では、エネルギー供給という枠組にとどまらず、交通などの地域サービスをパッケージとして提供できるビジネスモデルを構築したいと考えています。

次のステップではバイオマスも検討していますし、近いデザイン同じ思いを持っています。
うまく連携できるところで連携し、一緒に形にしていきましょう。

ーありがとうございました!

ーお隣の町でこんなことされてるんだなと今更ながらですが自分のアンテナの低さを痛感しました。
少し先のパラダイムを俯瞰する視座と現実を透察するリアリティー豊かな視野、地に足のついた経営的な視点を
併せ持つことが大切だと感じました。私自身は全然程遠いですが、、、今後ともよろしくお願い申し上げます。(T.Mi)

 

 

環境省サポートスタッフ 柄本廣宣氏 蒔田尚典氏

川西ジャーナル 新稲 陸氏

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