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インタビューず

技術士事務所早田林業 早田 健治 氏

早田 健治(そうだ けんじ)氏
1956年長崎県対馬市生まれ/1975年福岡県立筑紫丘高校卒業/1979年高知大学農学部林学科卒業
1979~2017年徳島県庁(林業技術職として林業行政・環境行政に従事)/2019~技術士事務所早田林業開業
資格等 技術士(森林部門・林業)、架線作業主任者、2級ボイラ技士、測量士補、森林インストラクター
所属団体等 徳島県勤労者山岳連盟常任理事/徳島県技術士会理事/NPO法人徳島ネパール友好協会理事
宝塚市木質バイオマス総合研修会にて「里山を宝に変えるために」講演

ー西谷地区で始まる「木質バイオマス事業」のキーパーソンである早田さんにお話をお聞きしました。
時節柄でリモートでのインタビューでした。

ーよろしくお願い申し上げます。早速ですが、詳細なプロフィールいただいていますので、そのお話からさせて下さい。

「高校、大学と山岳部、WV部で活動し、山が大好き。その流れで、仕事も山が職場の林業へ。徳島県庁在職中は、主に林業技術普及に従事し、特に、林業機械、素材生産、育林が得意分野。退職後も林業をやりたく、技術習得と体力作り、生活費稼ぎのため、森林組合に再就職し、2年間現場で働く。その後、技術士事務所早田林業を開業し依頼を受けての林業施業を行うほか、各種林業技術相談にも応じる。
広葉樹林業、木材のバイオマス利用については、現役時代からのライフワークで、現在も、広葉樹を中心に実証を兼ねて伐採搬出技術の研究を行い、特に枝葉については、集積方法や天然乾燥技術、燃料チップとしての販売戦略等を研究している。」

ー大学で学ぶ「林業」ってあまりイメージ湧かないんですが
高校の時に登山を始めて、進路に迷っていたとき、偶然、山つながりで林学科を見つけ、興味を持ちました。林学の面白いところは、縦に深くというよりも森林や林業を中心軸に、広くオールラウンドに全ての学問に触れるところだと思います。

森林生態学、森の作り方など生物学的な研究を行う造林学、道を作ったり木を切る方法や機械を研究する林業工学、リグリンやセルロース等木材の化学的な組成や性質を研究する木材化学、木材の組織、物理的性質、力学的性質いわゆる強度などを研究する木材理学、林業、林産業を通じた人と森林との幅広いかかわりに関して研究する林業経済学など、文系から理系まで全てのことが学べる面白い学問だと思います。
林業を学んで本当に良かったと思いますよ。楽しかったです。

徳島県庁では、技術職で入りましたので、林業がらみで、主に林業技術普及の仕事に38年間奉職していました。

ー38年間の林業の変化ってどう感じておられますか
木の値段が県庁に入った頃は、いい木だと立方メートル30万円くらいしていました。今だと同じ木でも3万円くらいでしょうか。木の価値が激減しましたね。当時は、木を切り出すにも人力や簡単な機械でしたから非常に手間がかかりましたが、手間をかけることができる値段でした。山主さんも潤っていましたしね。その山主さんも儲からないので山を諦める人、手間をかけない人が多くなりました。

ーその原因は?
家の建築様式が全く変わった、家の価値観、ステータスが変わったということでしょうか。昔は、木にこだわって家を建てる人が多かった、桧普請とか栂普請ですね。今は、100円ショップではないですが、機能優先の価値観の中、高価な木を使うという需要が少なくなってきましたよね。社会変化や消費者需要に追従出来なかった林業側の怠慢も大きいと思います。

ー県庁ではどのように取り組まれましたか?
行政側としては効率的に木を出す技術の普及に注力しました。また木の持つ良さを消費者にアピールすることに努めました。家を建てるには木が一番だというのは間違いありません、自信を持って言えます。なかなか需要は喚起できませんでしたが、社会のベースでは地産地消、なぜ日本の木を有効活用しないのかという問題意識は高まっています。逆に山、木に今までにない新たな価値を見つける人、需要も広がってきました。今回の木質バイオマスの事業もその一つの現れだと考えています。

ー林業全体の大きな復興となると、国や林野庁等含めたマスの対応戦略が必要だと思いますが
マスの戦略も必要ですが、1対1の個別戦略も重要だと思います。木材の主たる需要は、内装材を含めた建築、住居です。一生に一回のものですよね。個人的な思考、嗜好の選択になるかと思います。施主と木と木の生産者がつながる小さな物語が束ねられて林業があるんじゃないかと思っています。林業の将来を悲観はしていません。

悲観しない理由は、日本林業には現在、成熟した資源があり、しかも、立っている木は腐らないこと。農業と違い、市況や状況に合わせて時間軸を無視して、ストックしたり、小出ししたりできます。しっかり日本の山が団結して対応できれば、さまざまな可能性があります。ただ、その中で日本の林業のいちばんの問題は、所有が非常に零細であることです。2500万ヘクタールの山が日本にありますが、極論2500万人が所有しているような状況です。何をするにしてもまとめるためには、大変な労力がいります。大規模に何かをするのが難しい、1軒の家を作るには問題はないですが、大企業のようにまとめて大きなプロジェクトをやることは難しい。日本最大の製材所でも国産材なら年間消費量が10万立方メートルくらいです。木材を大量にまとめることがとにかく難しい。

それと、農業や林業などの土地産業には、必ず、制約条件があります。面積にしても土地生産力にしてもそれ以上量を伸ばせないという限界があります。  このため、量をまとめてコストダウンする以外の発想が求められるような気がします。ただ、業界としてはかなり遅れていますが、逆に伸び代はあると捉えてもいいかと思っています。

ー具体的な方策は何かイメージされていますか
この林業を救うのが「木質バイオマス」だと私は思っています。
木は丸いですよね。製材するは角材ですから必ず端材が生まれます。同じく木には、幹もあるけど枝も根っこもある。折れた木も建材に不向きなものもある。もともと林業は、ものすごくロスが多いんですよね。このロスを有効に余すことなく使えば、木全体の利用率として考えると、倍くらいになるのでは?つまり、利用率が倍になると、生産性も簡単に倍になります。収入も倍になります。

ープロフィールに書いておられます広葉樹林業にも絡めてお話いただけますか
木材を使うには適材適所が重要です。林業というとどうしても針葉樹、いわゆる杉檜、人工林が中心になります。日本全体では約3割、西日本では6割くらいが(兵庫県で43%林野庁平成29年3月31日現在)針葉樹人工林です。針葉樹が建築材利用であるに対して、広葉樹は、今はほとんど使われていません。広葉樹でも家具になるのは100年200年の巨木です。生育場所も限られています。昔は、都市に近い広葉樹林は、薪炭林として風呂から炊事まで都市の生活の熱源のほとんどをまかなっていました。しかし今はガスや電気に変わり、薪炭の需要はありませんからどうなったかというと、放置されました。

森林は放置すると、機能が低下します。景観も悪くなるし、成長も悪くなる。この広葉樹林をどう有効活用するかが、日本の林業の大きな課題のひとつだと思います。この課題を解決するのが新たな熱源「木質バイオマス」です。そしてこの事業を後押ししているのが「脱炭素社会の実現」です。

ー繋がってきましたね
脱炭素社会実現のポイントは、化石燃料からの転換と二酸化炭素自体の固定です。
広葉樹の特色は萌芽更新です。針葉樹は植樹しないとうまく更新しませんが、広葉樹は切り株にはえた芽から自然に更新していくんですね。スギ・ヒノキですと、太い立派な材木でないと用途がないので50−80年しないと使えませんが、広葉樹だと細い木でも使えるので20−30年で伐採して利用できます。

この苗木や種から成熟して利用するまでのサイクルにどんな意味があるか?
木は、二酸化炭素を吸って、光合成で自分の体である木材を造るとともに、呼吸のために酸素を吸って二酸化炭素を排出します。30~40年生以下の成長期の森林は成長量が呼吸量より大きいため、どんどん二酸化炭素を固定します。しかし年を取った古い木になると、逆に呼吸量が成長量を上回り、二酸化炭素を出し始めます。このため、サイクルの短い森林の方が二酸化炭素の固定には有利になります。西谷の森林ですと、60年は過ぎていますので、二酸化炭素を出している状況だと思います。二酸化炭素の固定を考えるなら、伐採して、若い森林にリフレッシュすることで二酸化炭素軽減につながります。

一方、日本のエネルギー利用の4割は熱として利用されています。このうち、暖房や給湯などの比較的低温の熱利用は、木材で十分に代換できます。ところが今は、都市では石油ストーブや電気温水器が一般的です。もし、これらを木質バイオマスに置き換えられたら?

こうして、森林もリフレッシュして整備され、さらに、エネルギーも二酸化炭素の固定も実現する。林業の良さは前述しましたが、現状に合わせて小出しが効く、所謂フレキシビリティーが高い事だと思います。このフレキシビリティーを活かして、まだ、なじみが少ない木質バイオマスを地域にうまくフィットさせていくことが可能だと考えています。

ー西谷地区ではどのように推進しようとお考えですか
今はまず一歩進めることかなと思っています。一本の木を切り出して、サイクルを一回転させることです。
西谷地区は、その一歩を進めるベースがすでに整っていることが特色です。

将来的には、西谷地区の木材の種類に合わせて建築用材、きのこ原木等を含めて需要を最適化することも可能になってくると思いますが、まずは、チップ化してバイオマスボイラーでの熱利用をスタートさせたいと考えています。

合わせて、西谷で期待しているのは大面積の「県有林」があることです。
約900ヘクタールの県有林ですから、先ほど言った森林の所有規模が小さく、まとめることが難しい日本林業の弱点をクリアすることができます。もし、全面積を利用可能とすると、30年サイクルで毎年4000トンの燃料チップ供給ができます。さらに、県有林がきっかけとなって「西谷方式」が北摂地域全体に広がれば、京阪神全域に木質ボイラーの導入が広がっていくことも夢ではありません。

小さく始めて大きく発展させることが出来る、まさに林業の実態に即したボリュームがあり、熱源利用に最も重要な安定供給が出来ることが最大の武器だと思います。
チップボイラーを普及する以上、永続して安定的にチップを供給出来ることがいちばんの課題ですからね。それが西谷なら可能なんですよ、そこが最大のメリットです。

ー需要の普及、出口戦略という点ではどうお考えですか
石油ストーブと薪ストーブを比べれば分かりますが、使い勝手は石油には負けますよね。石油ボイラーとチップボイラーも同じです、機器自体の値段が大きく違います。ただ、燃料から見ると外国から石油を買えば当然国外にお金が流出しているわけですから、国のエネルギー安全保障や発生する雇用や内需を含めて考えると一概に高い安いの話にはならないと思います。しかし、現状では木材チップボイラーはあまりにも高く、脱炭素を促進する補助金等での強力なサポートが必須だと思います。またそのサポートなしに脱炭素社会は実現しないでしょう。

仮に政策的なサポートが実現しても、実際のモデルがないと実行出来ません。社会全体の合意形成も必須です。見える化していないと意識を共有出来ません。そのためには、小さくても身近な地域がバイオマスで回っていることを実証して見せなければいけません。小さくなければ逆に実現は無理でしょうね。
その中心が西谷であり、西谷なら実現できると確信しています。

ー小さく始めることが大切だ
自然相手ですから、大きく何かを急に変えることは不可能です。また林業は装置産業ではなくマンパワー産業なので、小さく始めやすいんですよね。木質バイオマスが、あまりうまく進んでいないのは、大きく急激に進めようと考え過ぎているんじゃないかと思います。林業は細やかな対応も必要です。小さく手の届く範囲で先ずは実現させて見せることです。

面で作り込めるかは別にして、先ずは多くの線を作り出す、人と人がつながる線を引いていくことだと思います。大阪の人と繋がったりですね。その点京阪神と近い西谷は魅力的です。その一本一本の線がまとまって束になって新しい木質バイオマスの面が生まれる、そのためのスタートです。相手が一つなら一つ、二つなら二つ。あくまでフレキシブルに柔軟に一歩一歩ですね。

その一歩一歩が脱炭素社会の実現に貢献しているんだと、誇りを持って若い人たちに関わってもらいたいなと思っています。林業は経験知の蓄積継承が根幹ですので、それを受け継ぐ若い人材がいちばん大切です。山は永遠に残ります、継続する責任がありますよね。徳島県も、とくしま林業アカデミーという学校を作っていますが、毎年15人ほど入学します。京都からも受講生多いですよ。

ここ西谷でも、放置するのではなく手を加えることで里山は生き返る、経済的にも大丈夫だという事を現地で見える化し発信することで、多くの若い人に里山の魅力、林業の楽しさを実感してもらいたいです。着実な活動を通じて後継者を作り出したい、作り出さなければ、里山は無くなりますよね。

なかなか大変ですが、あと10年くらいは頑張れるかな?(笑)頑張っていきたいと思います。

ーありがとうございました!

ーリスクを見極めて、一歩一歩着実に頂を目指す高所登山家の方だなと感じました。
私はロッククライミングでしたので、派手に登って派手に落ちてましたが、、、。
近々西谷に拠点を置いて活動を開始されますので、お会いしてご指導いただくのが楽しみです。(T.Mi)

 

 

(有) 紋珠 高槻バイオチャーエネルギー研究所             所長 島田 勇巳 氏

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