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インタビューず

丸山湿原群保全の会代表 今住 悦昌 氏

今住 悦昌(いまずみ えつまさ)さん
NACS-J自然観察指導員
丸山湿原群保全の会代表
丸山湿原エコミュージアム推進協議会会長

丸山湿原群は宝塚市北部、西谷地域に広がる湧水湿原群(滲水湿原群)である。5つの形状の違う谷型湿原で構成され、面積は湿原群合計約3930㎡。多くの貴重種を含む動植物が確認され、生物多様性の宝庫となっている。
その湿原群の重要性から2014年に宝塚市、2015年には兵庫県の天然記念物に指定された。
湿原の本格的な発達は、周辺山林の薪炭利用が盛んになった江戸時代前期ごろからだと考えられている。
里山(山林利用)としての役割が終わった今、放置による規模の縮小や動植物の減少が心配されている。
ー丸山湿原群保全の会(共生のひろば 13 号,2018 年)抜粋

北摂里山博物館YouTubeより

ー少し雨混じりの曇天の朝、今住代表の笑顔に迎えられ、丸山湿原群にお伺いした。

ーお忙しいところすみません、本日よろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。先ずは一周しながらお話ししましょう。
この道は、昔、大八車が走っていた旧道です。

湿原って何?と言うお話からになるわけですが、滲水湿原とも言いますが、湧水湿原は、
なかなか説明が難しい。
人々が里山の中で木を切ることによって山が崩れて谷を埋め、その谷筋に流れる水が緩く停滞しながら流れ続けているのが湿原です。里山だから生まれたんですね。現在のように、里山に手が入らずに里山放置林化すると木が生えて湿原も消えてしまいます。昔は、湿原が動くというか環境によって色々な場所に出現できたんですが、人の手がいつも入っている里山と呼べる山がなくなってきたので、湧水湿原が新たに生まれることは、まずないと思います。私は、兵庫三大湧水湿原と呼んでいますが、兵庫県には三田市の皿池湿原、加西市の網引湿原の3つの湿原が辛くも保全されています。その中で丸山湿原は最大規模ながら5つの湿原の群ですので、1つ1つは狭く小さい。保全の手が入らなければ本来なら消えてしまうのが湧水湿原の運命かなと思います。

ここが、第3湿原です。湿原の末期を表すヌマガヤ生えてますね。

ーえっ末期なんですか?
5つの湿原全てが末期です。
私たちはその末期を遅らせる活動をしているわけですね。この面積を守る感じですね。周りに侵食してくる木を伐採し、草刈りをして守る。自然遷移を食い止めていると言っていいのかもしれません。自然遷移を食い止めないと生き残れない生物多様性がこの湿原には豊富に存在しています。私たちはこの生物多様性を守ることが保全の会のミッションと考えています。草刈りも、冬にします。植物や昆虫などが活動する時期はそっと見守っています。

例えばここにいる八丁蜻蛉

日本一小さなトンボとして知られ、世界的にも最小クラスです。このトンボは、浅い水域がひろがっているような環境にしか生きることは出来ません。まさしく湧水湿原ですね。

ー初めて八丁蜻蛉見ました。素晴らしいですね。
ーそもそもですが、丸山湿原を保全しようというきっかけは?

私は西谷が地元です。この辺りは、昭和45年ごろまでは芝刈りや炭作りなどに利用される地元の里山でした。
当時は湿原として特に保全されていませんでしたが、昆虫好きや植物好きが多く入山していました。

やはり、宝塚新都市計画で注目されたのが大きかったですね。その後、県の保有林となり、2004年に湿原環境や保全活動の基本などを学習する「丸山湿原群保全活用リーダー養成ワークショップ」が2年間開催されました。そのワークショップに私も参加し勉強させていただきました。保全活動は、このワークショップがきっかけです。ワークショップが終わり、発展的に 2006年12月、「丸山湿原群保全の会」が活動を開始しました。

私は先ほど申しました通り地元ということで、副代表を務めました。7年ほど前に代表に就任し現在に至っています。

ーワークショップに参加されたのは、湿原に興味をお持ちだったんですか?
田んぼに興味があったんですね。家は稲作農家ですので、田んぼを見て育ちました。いろんな生き物や植物がそれこそ多様に育っている姿が好きです。自分の田んぼが、生物多様性に富んだ生き生きとした田んぼであり続けたい、という気持ちでワークショップに参加しました。少し他の人とは違っていたでしょうね。

今も自分の田んぼを整備し、OECMの認定申請中です。今年(2023年)8月には認定されると思います、予定ですが。
#OECM:Other effective area-based conservation measures:その他の効果的な地域をベースとする手段。国立公園などの保護地区ではない地域のうち、生物多様性を効果的にかつ長期的に保全しうる地域のこと

ー保全の会の活動は、具体的にはどのような活動をされていますか?
会の活動方針として6つの活動を行なっています。
第1は、湿原の植生管理、再生事業です。2022年実績ですと、侵入笹、雑木、ヌマガヤの刈り取りを会員で定期的に行いました。
活動を支える動植物調査として「サギソウ開花数調査」「両生類卵塊数調査」「水質検査」「トレイルカメラによる野生動物動向調査」を継続的に実施しています。
活動を広げるために啓発セミナーを実施しています。昨年9月に豊岡市で、保全活動の経験を生かし「ガイド養成講座」を実施しました。
環境教育も大切な取り組みです。宝塚市立西谷小学校3年4年生のフィールドワークを中心にした環境学習に協力しています。
また地域の保育園である「はなみずき保育園」「やまぼうし保育園」の自然体験活動をサポートしました。
ルーチンワークも大切です。定期的な湿原調査をゴミ回収と合わせて、昨年は21回実施しました。

広報活動や看板設置などまだまだやることはいっぱいありますね。

ー会員の皆様のモチベーションの源は?
私自身はできるだけハードルを低くして多くの人に参加して欲しいなと思っています。
若年層の参加は望むべくもありません。シニア層も定年延長の煽りもあり参加数は漸減しています。会員からは「癒しになる」という声が多く聞かれます。それこそ生物多様性の持つ一番の効用ですよね。湿原自体の問題や課題、成り立ちや衰退の危機感など色々な面がありますが、会員が取り組みやすく活動しやすい環境を作ることが、私の仕事だと思っています。

ー代表ご自身のモチベーションは?
生物多様性を守りたい!その一念ですね。
教師をしていましたので、色々なことを伝えることは得意だと思います。その点では、自分が得意なことが活かされているかなと思います。

ーどんな教師だったんですか?
大阪市で中学の国語の教師だったんですが、そうですねえ、1時間笑って授業を受けてもらうことを目標にしていました。結構面白かったと思いますよ(笑)。

ー次の目標と言いますか、目指す目標は?
保全活動の次の段階「再生」事業に進めればと思っていますが、なかなかハードルは高いですね。
どこまで再生するのか、そもそも再生するゴールのイメージがうまく浮かびません。人員もふくめまだまだも目標にするまでには至っていないと思っています。
その点では、先ほどお聞きした北摂里山地域循環共生圏や北摂里山フィールドパビリオンの活動を通じて、他の地域との連携を深めていきたいと思っています。

ーありがとうございました!

ー面白い授業を聞くように楽しく丁寧にご説明いただきました。
ーこんな素晴らしい場所が車で30分のところにあったとは、、自分のアンテナの低さに反省しきりです。
T.Mi

 

多田グリーンハイツ自治会「お出かけ支援」 難波 康晃 氏

西谷地区地域活性化部会 部会長 安場 翼 氏

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