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インタビューず

多田グリーンハイツ自治会「お出かけ支援」 難波 康晃 氏

難波 康晃 氏(左) 地縁法人 多田グリーンハイツ自治会 広報委員会委員長
中村 英二 氏(右)   地縁法人 多田グリーンハイツ自治会 会長

多田グリーンハイツは、1967年分譲開始された開発面積230ヘクタール、人口13,966人、世帯数約6,370世帯(令和4年3月末現在)を誇る川西市内最大のニュータウンです。地域が持つ高齢化問題はこのニュータウンにも顕著に現れ、高齢化率は41.9%を占めています。
この高齢者が増加するニュータウンの公共交通の問題を解決すべく多田グリーンハイツ自治会が取り組んでいるのが、「お出かけ支援」事業です。

以上(川西市地域公共交通会議 令和3年第1回会議資料より)

地域自らが立ち上がり高齢化社会の移動を正面から取り組んでいるこの事業について、その変遷と今とこれからを本事業を中心となって推進されている難波 康晃氏にお聞きしました。

地域の中心に位置します第一自治会館にお伺いしました。
近接します能勢電鉄平野駅から頂上の見えない坂道を、この道の行き来は大変だろうなと実感しながら歩きました。

ーよろしくお願いします。
歩いて来ましたが、息が切れました。地域内の移動は、高齢者には大変な負担だなあと感じました。
先ずは、取組のきっかけからお聞かせいただけますか?
よろしくお願いします。きっかけは、2011年にスタートした川西市の「ふるさと団地再生事業」です。
検討が重ねられ、2012年に、「ふるさと団地再生モデル基礎調査」が、市内の多田グリーンハイツ、大和団地、清和台で実施されました。
私ども自治会ではこの基礎調査をベースに、2013年意見交換会や自治会内の検討会を実施し、取り組みべき4つの課題と取り組み案を策定しました。
①地域の移動利便性の向上を目指す「住宅地内のお出かけ支援」案
②高齢者の生活支援と子育て支援を目指す「地域が運営する子育て支援サービス・高齢者生活支援サービスの充実」案
③若年層の流入促進を図る「住み替え促進プロジェクト」案
④地域活動・地域の魅力発信を実現するための「地域活動の活性化と地域魅力の向上・発信事業」案
この4案をベースに検討を進め、①「住宅地内のお出かけ支援」をモデルプロジェクト化することとし、川西市をオブザーバーに加えた「お出かけ支援プロジェクト委員会」を発足しました。その後メンバー20名程度で頻繁に会議を積み重ねました。

ふるさと団地再生の手引き(モデルプロジェクト編) より抜粋

ー自治会が一番問題視した点はどこだったんでしょうか?
買い物難民ですね。
高齢者が買い物に出ることは大切です。家に閉じこもってしまう。それは避けなければならないということが一番でした。
伊賀市四十九町のマックスバリュ上野店が買い物支援の事業を行っていたので、参考になるだろうと川西市から紹介を受け見学に行きました。その際には、大和団地、清和台の自治会も同行しました。

その後、大和団地は地域の空きスペースを使った居場所づくりを課題とし25cafe(ニコかふぇ)事業を、清和台は多世代交流のきっかけづくりを目指して幸(CO)-ウォーキング事業を展開されています。

この伊賀市の事例では、元は自治会が運営しようと取り組まれましたが、結局頓挫し、マックスバリューの事業として取り組んだということが参考になりました。伊賀市の例をもとに、私どもは先ず地域内にある西友多田店にお話を持ち込みましたが、了解を受けることが出来ず、自治会で取り組むことをベースに検討を進めました。

事業者が主体だと路線にあまり制約はないんですが、事業者でなく自治会がとなりますと大きな制約である道路運送法に従わなければなりません。
ある程度の受益者負担も考え、運輸省とも話しましたが有償での運行は叶わず、道路運送法の許可を必要としない無償ボランティアで自治会が運営せざるを得ませんでした。また公共交通、この地域では阪急バスとのすり合わせが重要な要件でした。

この幾多のハードルを乗り越えて、2013年テスト運行に漕ぎ着けました。その検証を経て、2014年実証運行を行い、2015年に継続実施に移行し、現在に至っています。

ー大変なご苦労をされた訳ですが、買い物難民をどう定義するか、実際にどこを走るか、どこをカバーするかが一番のポイントですね。
団地内には、阪急バスの循環バスが運行されています。
その運行エリアから外れていることがマストになります。バス停から半径400メートルはカバーしているとの認識をよく示されますが、実際には高低差があり、平面上での線引きでは実態に則していないと思います。この点は阪急バスとよく協議し、運行エリアを決定しました。
他に、高低差のあるエリアであること、今回運用するワンボックスカーが安全に通行できるルートがありかつ乗降に問題ない停留所を設置できること。この3点で検討しました。

当初、団地内の北に位置する向陽台マンションを起点とし、西友多田店をつなぐルートでテスト運行がスタートしました。その後、西に位置する天狗岩近辺、南側の多田院近辺にルート拡大し、3地域の7停留所と西友多田店を結ぶ3つの運行ルートを決定し現在運行しています。ルートは、各停留所発時と西友発着時を決めており、月~金曜日午前午後便で運行しています。

運営の仕組みは、運行主体は自治会、車両はワンボックスカー1台を自治会費でリースしています。運転手、スタッフはボランティア、利用者は会員として事前登録した65歳以上の高齢者です。ガソリン代は徴収が認められていますので、翌月に実費徴収しています。
ふるさと団地再生の手引き(モデルプロジェクト編) より抜粋

ー利用者の状況はいかがですか?
利用希望者には先ずは登録していただきます。現在、登録者数で35名程度です。
高齢者が対象ですので、施設への入居、転居等で若干減少傾向にあります。課題を再認識すべくアンケートを取り、再募集を行っていますが、希望自体は堅調です。安全上制約上、ルートは決まっていますし、時間も決まっています。エリアを広げる事ができない現状では、ある意味致し方ないかなと思います。しかし、アンケートで見ている限り、自分自身が高齢化し免許返納などで、将来的には利用したいという意見は多いです。自治会としては、その声を汲まなければならないと思っています。

ー運営側の課題としてはどのように考えておられますか。
今車両1台で1日運転のボランティア1名で4便可能です。
実際には予約の状況から見て3便で運行しています。ある程度の増便は可能ですので、運行自体は柔軟に対応できると考えています。翻って、利用者は多様な要求と言いますか、個々の事情に即した多様なニーズを持っています。
柔軟な運行と多様なニーズとをマッチングする予約システム自体が人手をかけて紙ベースのシステムになっています。ここが最大のネックです。

ーお話お聞きしていますと、課題はその点でしょうね。
この予約運行システムを柔軟なデジタル化されたものに置き換えることを検討したいと考えています。
現状ではまだ今のシステムでも問題ないと判断していますが、今後のスムーズな運行と将来的な発展を考えると厳しいですね。今が「お出かけ支援プロジェクト」の分岐点だと思います。

買い物はどこでも車で行きますので問題ありませんという人がほとんどですので、危機感は薄いでしょう。住民全体が危機感を共有しリソースを集中できるかどうかにかかっています。
アンケートを見ますと、市立川西病院の移転等で団地内のバスの便数も少なくなり、バス路線がこのままで維持されるかという少し先の危機感は、団地全体で共有されていると思います。阪急バスに代わる公共交通事業者が生まれるとは考えられません。

この危機を乗り越えるために「お出かけ支援事業」をしっかり育成し、地域の移動を担保する事が自治会の役割だと考えています。しかし、自治会単独運営でボランティアの運行には限界があります。市の力添え、資金面での補助が必要ですね。

私たち自身も勉強しなければなりません。
石巻市のコミュニティーカーシェアリングの会議にオンラインで参加したこともあります。
池田市の伏尾台のMaaS事業神戸市北区筑紫が丘の自動運転事業移動サービスなど、近隣の事例も見学や勉強していきたいと思います。

未来を作り出すのは今ですので、移動の手段がなくなるかもという危機感を住民一人一人が今の自分ごとに出来るのか、、難しいところですね、どこのニュータウンでも問題じゃないでしょうか。

システム自体も団地内にはいろんな人材がおられますので、ITに強い方の力もお借りしたいです。
継続に一番必要なものは人材です。人材発掘育成は地域を守る私たちの1番の課題です。
これからも会長共々全力で頑張っていきたいと思います。
ーありがとうございました。

 

ー55年の街の歴史の中には、住む人たちの歴史があります。
結婚して新居を建て、子育てをし、懸命に働き、子供が巣立ち、定年を迎え、終の棲家となる。
その時時の街に対する思いは、どんどん変わっていきます。その多くの世代の多くの違った思いにどう答えるか、、
それを受け止めて手探りで汗をかき努力する人の思いが継続されることで、街は生き残って行くんだなと感じました。
難波さんの熱い思いを受け継ぐ担い手が早く育つといいですね。(Ti)

 

 

曹洞宗 福壽山 徳林寺 越智 普門 氏

丸山湿原群保全の会代表 今住 悦昌 氏

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