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インタビューず

(株)sonraku代表取締役 井筒 耕平 氏

井筒 耕平(いづつ こうへい) 氏
(株)sonraku代表取締役 神戸大学学術研究員
環境エネルギー政策研究所、備前グリーンエネルギー(株)、美作市地域おこし協力隊、2012年より現職。博士(環境学)。
岡山県西粟倉村で「あわくら温泉元湯」とバイオマス事業、香川県豊島で「mamma」を運営しながら、再エネ、地方創生、人材育成などの分野で企画やコンサルティングを行う。
共著に、「エネルギーの世界を変える。22人の仕事(学芸出版社)」「持続可能な生き方をデザインしよう(明石書店)」などがある。
愛知県出身、神戸市在住。

ーコロナ禍の中、テレビ会議でお話をお聞きした。

ー北摂里山地域循環共生圏の柱の事業である「木質バイオマスの有効活用」のステークホルダーとして参加頂けるとのことでありがとうございます。このインタビューはいつもそもそもから始まるんですが、そもそも井筒さんと環境、木質バイオマスとの出会いとはどのようなものだったんでしょうか?
長いお話になりますね(笑)。北海道大学で水産を勉強していました、そこに繋がってるところは綺麗じゃないんですが(笑)、北海道でスキーがしたかったのが一番でしたね、ニセコに入り浸ってモーグルやってました。大学時代は、練習船での2週間が一番の思い出です。
卒業して清水港の物流会社で働いていました。特に水産というのではなく、海外と関わりたいなという動機でしたけど。まだバイオマスには距離がありますね。会社を辞めて名古屋大学で環境学を学んだのが始まりです。サーフィンもやってましたので、単純に環境保護に興味を持っていました。「井筒さんは、自然と人とどっちに興味があるの」って聞かれて、「人ですかね」と答えたんですが、自然だけじゃなく、人や経済活動まで踏み込まないと環境保護もダメなんじゃないかと自分で考えたんですね。自然保護だけじゃなくてもっと社会活動に関わっていきたい。そこが今の自分の行動につながってきたのかと思います。

ー「環境と人」の交わりのどのあたりに自分をプロットしているか、どのあたりにプロットしている人と話しているか関わっているか、人と環境の関係をどう見ているかをお互い共有するのは大切ですよね。その点で何か経験されましたか?
大学院の担当教官が、地球物理学の人だったんですが、「持続可能な地域を作ろう」をコンセプトに、愛知県のある村をフィールドにゼミで調査に入りました。その時の私の担当がエネルギー担当だったんです、2003年でした。調べていくと、この村は森林が93%もあるのに、なんでエネルギーを域外から買ってるのかなと、昔はそうじゃなかったのに、木と共生していたのにと思いました。財政とかも調べたんですが、6−7割東京依存なんですね。東京に依存してエネルギーも外から買うのは持続性から見てどうなのか。この調査では、これからの地域は、テクノロジーは新たに入れてもスキームは昔のスキームに戻していくべきなんじゃないかというビジョンを作りました。

この経験から地域の持続性のためにはエネルギーは非常に大きなファクターだなと感じたことが私のベースになりました。地域を作るにはエネルギーをしっかり作り込まないとまずいなと考えています。

ー「持続する地域」とはどのような定義なんでしょうか?持続しなくてもいいという選択肢もありますよね。
全部の集落が全部ではなく、そうですね、難しいですけど、残りたい残したいという住民の思いの強さ、思いの強い地域じゃないでしょうか。正解ないかもしれませんね。自分としては、千年スパンで考えようと思ってます。その視座で見ると、日本の地域として森林資源はもっと活用するべきではないでしょうか。

ーそもそも西粟倉でバイオマス事業を始めたきっかけは?拠り所にした強みみたいなものはありましたか?
西粟倉のバイオマスで見ると、林業が成立していることが強みです。A材とかB材の事業が成立していることですね。それで言うと役場が一番やる気がありましたね。2008年くらいだとA材とかB材をどう回すかが課題だったんですが、2013年頃だと次の問題C材の活用に悩んでいたんです。この課題解決にベストだったのが木質バイオマスの運用でした。温泉もあるしで、役場プロデュースで私がディレクションからプレイヤーまでをやった感じですね。

ー事業を始めて、当初の思惑と違ったなというところはどんなところですか?
薪ボイラーとチップボイラー用に今1000トンの薪と100トンのチップを作っていますが、薪じゃなかったなというところです。1000トンクラスになると薪じゃ無理だなと思います。人手がネックになるので、自動化を考えるとチップだなと。利益が出ないのが最大の問題ですね。20万トン購入するバイオマス事業所が近くにありますので、どうしても入り口の木材の購入単価、仕入れが高くなる上昇基調であることがネックです。始めたことから見ると倍以上になっています。売値は灯油との競争ですので、上下しますがこれも厳しい。自治体サイズの部分最適だけではもう立ちいかないですね、初期費用はサポートがありましたが、特に補助とかないですし。現状は踏ん張ってるというのが正直な感じですね。

バイオマスを下支えする林業をみると、現状は非常に厳しいと思います。木自体の用途は、エネルギーかマテリアルかになりますが、プレゼンスとしてどうかと言われると、エネルギー素材としてはどんどん厳しくなっていきますね。林業のマーケットにも俯瞰したビジネスモデルが必要ですが、全然ITが入っていません。上流から下流まで、入口から出口までITを使った情報管理をしないと現代経済では勝ちようがない。地域経済で見た林業を含めた山間部の需要って小さいし、人が住むという視点で行くと文化とかの持続しかないかなと思ったりもします。30年後くらいには何か山間部としての新しいプレゼンスが生まれてくるかもしれませんね。

ー2014年から6年事業されてるわけですが、次の6年はどんなイメージをお持ちですか?
低質材、C材っていうんですが、それがこの地域ではマックス3000トンしか産出されないので、3000トンに対応するサイズになれば、次は熱を電気にのコジェネを2基程度入れて、事業サイズとしてはマックスになります。木質バイオマス自体は今大きな過渡期にあると思います。

FITがある間この2−3年はまだバイオマスにも場所はあるなと思います。FIPが導入されるとバイオマスは勝てないと思いますね。インフラとして地域熱供給が必要な北日本とかでは生き残っていくと思いますが、西日本ということでは太陽光でとなるんじゃないですかね、長期的に見れば。

これからのバイオマスの生き残りについては、太陽光、蓄電池の価格がいまだに下がっているので、得意とする熱事業でもコスト的な強みを発揮できなくなります。唯一、高温で蒸気を作るという点で、地域熱供給か産業用熱供給に活路があるかなと思います。もう少し向こうまで見てみたいですね。

事業の次という点では、会社にこの4月からマネージャーに入っていただいたので、機材などの開発や太陽光事業とかにも挑戦しようと思っています。

私自身の次ということでは、ちょっと大げさかもですが、これからも、人類における新しいチャレンジに自分も参画したい、そこから出てくる問題に挑戦して解決していきたいと思っています。

ー最後に、北摂里山地域循環共生圏に取り組むにあたって一言お願いします。
私の経験からも、木質バイオマスはあくまでも手段なので、目的である需要、カスタマーありきで考えて設計しないと存続できないと思います。住宅地でバイオマスは相当好きでないと無理ですからね。太陽光、蓄電池とは違ってどうソリューションとして優れているかをちゃんと打ち出せないといけないと考えています。挑戦ですね。

ーありがとうございました!

経験を生かす経験しているからこそ話せる内容というのがやはり重要だなと感じた
経験不足を痛感するインタビューでした。
今後の井筒さんの活躍が楽しみです。よろしくお付き合いの程お願い申し上げます!(T.Mi)

川西市黒川 今西菊炭本家 今西 学 氏

妙見里山倶楽部会長 伊藤 温夫 氏 

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