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インタビューず

能勢電鉄株式会社 妙見営業課長 岡本 淳一 氏

岡本 淳一(おかもと じゅんいち)氏
能勢電鉄株式会社 鉄道営業部 妙見営業課長

ー北摂里山地域循環共生圏構想の中心に位置する「日本一の里山」黒川地区と都市部を結び里山の心地に人々を誘う玄関口「妙見の森ケーブル 黒川駅」。今回は、北摂の里山の魅力を知る岡本様にお話をお聞きすべく、冬期休業目前のケーブルに乗って、妙見の森にお伺いしました。

ー5分の短いですが楽しい空中散歩の末、山上駅に到着。1925年に完成した鋼索線が基で、戦後一時不通であったものを能勢電鉄さんが再開し現在に至っています、歴史あるケーブルカーですね。ー本日は冬期休業まぢかのお忙しいところすみません、よろしくお願い申し上げます。早速ですが、岡本様と里山とは、どのように出会われたのですか?
よろしくお願いします。
そうですね、私は、入社してから駅務員を経て、車掌、運転士と経験してきたんですが、平成12年、営業課に転属し、今の「のせでんハイキング」を担当することになりました。
高校では野球に打ち込んでいましたので、野球なら分かるんですが、ハイキングのことは右も左も分からない状態でした。駅から行けるハイキングコースを新しく開こうと、北摂の山の中を隈なく歩き回ったのが、キッカケですね。歩き回っていてよくお会いしたのが服部先生でした。いつも2−30人の方と一緒に山の中を歩いておられました。色々里山のことやエドヒガンのことを教えていただき、自分自身が里山に興味を持ちました。また先生のおっしゃることが自分の目にしたことと一緒なのでよく理解でき知識を吸収していきました。
当時ののせでんハイキングは、早春ハイキングや耐寒ハイキングレベルで年4−5回の開催でした。何か新しいことができないかと思い考えて手がけたのが「のせでん里山ハイキング」シリーズでした。マップを手作りして、ここから見える里山の景色は、、、とか、これが台場クヌギです、台場クヌギとは、、、

というようなことを書き込んでいき、それを参加者の皆様にお渡ししていました。
当時は、里山といっても言葉ではご存知でしたが、「里山ってどの山ですか?」とよく聞かれました(笑)。ハイカーは健康のために歩いている人が多いわけですが、いつも最後尾や先頭で一緒に歩きながら説明していると里山や台場クヌギに興味を持つ人が増えていった実感があります。色々模索しながらのせでんハイキングを約17年間担当しました。
おかげさまで非常に充実したハイキングコースに育っています。入った当時は年4回程度の開催でしたが、今では年間40回弱のハイキングに毎回約500名の皆様がお越しになります。

ー自分の足と目で里山を熟知されているわけですね。ハイキングコースが好評だということは、里山を歩く魅力があるということですよね。里山の魅力ってなんだと思われますか?
里山というのは、人の生活と山が一体となって共存する姿だと思います。
その点では、この黒川地区は、今西さんが今も菊炭を守っておられますし、菊炭友の会の皆様が、ボランティアで炭焼きをしておられます。また原料の台場クヌギをこの地で育て守っておられますので、里山の伝統が今も息づいている数少ない場所だと思います。しいたけを作っているのも里山があってのことではないかと思います。その伝統が、四季の移ろいの中で変化するパッチワークの景観を辛うじて維持し、他では見ることの出来ない景色を私たちに見せてくれていると思います。

私どもで運営しています妙見の森バーベキューテラスでは、地域で製炭した炭に拘り一貫して提供しています。伝統を守る一助になればと考えています。人々が感じる里山の魅力という意味では、歴史的な魅力に溢れていることだと思います。
ハイカーの皆様も高齢の方が多くなってきていますので、歴史に興味を持つ方も多く、この地域の里山は魅力的だと思います。
能勢妙見山は、古く(注;750年代に行基によって開山されたと言われています)から霊場として多くの人の信仰を集めてきました。能勢電鉄はご存知の通り、この参拝者のために敷設されたものです。しかし、交通機関がなかった時代には当然ですが大阪や神戸など関西全域から歩いて参拝しました。その参拝道跡が多く残され、当時の道標が点在しています。
道標に刻まれた一文字一文字に道を行き交う古人が見える、、ロマンを感じていただけるものと、道標巡りのハイキングを企画しましたが、人気がありました。道標の指し示している場所自体が歴史ですし、勉強すると奥が深いです。そもそも旧道は根深い人気がありますね、数年前に能勢街道踏破ウォークも開催しましたが、延5000人、毎回1000人の集団で歩きました。

また妙見の森のこの辺りは標高も500メートルはありますし雪も降りますが、窯跡が残っています。
見る度に、昔の人はこんな高いところまで登って炭を焼いていたんだなあ、さてどの道で登りどの道で降りたのかなーと思うと楽しいですね。高齢化社会の中では、里山が身近な存在であることも大きな魅力だと思います。
麓ですし、六甲山のように身構えなくてもいい。ハイキングコースが駅にも近くアプローチが容易い。

また今はコロナの影響で、ファミリー層が想像以上にお越しになっていますね。子供たちがケーブルカーに乗りたいと来られるファミリーも多くおられます。近くにある里山ならではの自然が見直されてきているのではないでしょうか。町のすぐ近くに豊かな四季の自然に出会える妙見山は素晴らしい里山だと思います。

結局人がいないと里山は無くなってしまいます。
コロナで地方が注目されていますし、この里山の魅力に気づいた人の中から、この自然の中で暮らしたい人が出てきてほしいですね。古民家の空き家も最近は出てきていますし、住みだした人が実際におられますので、新しい住環境という点でも魅力の1つではないかと思います。

ー妙見山を観光という視点で見た時、更なる発展のための課題は?
この妙見山は、高尾山によく似ていると思います。
後背人口としての東京と関西地区の違いはありますが、来訪数は高尾山の方がおそらく10倍近く多いんじゃないでしょうか。しかしそれだけに妙見山は、伸び代可能性を秘めていると思っています。標高は妙見山660メートル、高尾山590メートル、都心に近く交通網にもつながり、ケーブルカーがあって、霊場でもある。

一番の違いは、飲食出来る場所、お土産屋さん、カフェ、所謂立ち寄り場所ですね。蕎麦屋だけでも十数軒、高尾山にはあります。ちょっと行ってみようかの選択肢がバーベキュー以外に少ないのは観光地として捉えると課題かなと思います。
ケーブル乗って以降も大切ですが、一番は妙見口からケーブルの黒川駅まで20分くらいの道、昔の花折街道、ここが変わると面白いところになるんじゃないでしょうか。

とは言っても、やはり里山の素晴らしさを伝えることが一番大切だと思います。ハイキングも初めは少ない人数でしたが続けていくことで大きな流れになりました。里山の魅力素晴らしさをうまく引き出し、丁寧に伝え続けることが課題ではないでしょうか。
私たちも頑張っていきたいと思います。
ーありがとうございました!

今更ですが、里山としてのブランディングが重要なんだなと感じました。
その為には、行政のみならず広範な地域住民全体の真剣な連携と実行が必須であり、
自分に何が出来るのか何をするのかの問いを痛感したインタビューでした。(T.Mi)
4枚の写真データ(※)は、能勢電鉄様よりご提供いただきました。ありがとうございました。

 

株式会社里と水辺研究所 代表取締役 赤松 弘治 氏

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