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インタビューず

一般社団法人宝塚にしたに里山ラボ  代表理事 龍見奈津子 氏

龍見 奈津子(たつみ なつこ)氏
一般社団法人宝塚にしたに里山ラボ 代表理事
(同ラボは、2019年 第21回 人間サイズのまちづくり賞 まちづくり活動部門知事賞受賞されました。)

川西市内から三田に抜ける北摂里山街道(県道68号線)を走っていると、「宝塚自然の家」のサインをよく見ます。長く休館していた宝塚自然の家が今復活して西谷の中心として活発に活動していると、西谷地区活性化部会のプレゼンテーションを拝見し、同施設にお伺いしました。
里道をサインに従って進むと、1973年竣工のお洒落な低層ビルが迎えてくれました。
坂倉建築研究所が設計された(新建築1974年7月号掲載)とお聞きし、さすが面白い設計だなあと感心しながら、事務所にご案内いただきました。
指定管理者となって同施設を運営されている、一般社団法人宝塚にしたに里山ラボの龍見代表理事にお話をお聞きしました。

ーよろしくお願いします。龍見さんは、西谷のご出身ですか?
よろしくお願いします。父が西谷の出身で、私も西谷の中部地区で生まれ育ちました。
大学で東京に行き、早稲田大学第一文学部に入学し、専攻したのは日本の近現代史です。時代背景が人にどのように影響したかに興味があって研究していまして、その時々の興味を持った人を追いかける感じでした。
最後の一年は、ちょうどスポーツに興味があり、ある人物にフォーカスして研究していました、円谷幸吉さんです。
円谷の生涯を君原健二と対比しながら卒論を書きました。

大学時代一番勉強になったのは、多様性を知ったことだったと思います。
早稲田は色々面白い人が大勢いる大学ですし、その人たちに驚きながら感化されながら過ごしていた感じです(笑)。プロボクサーやめてそれから勉強して入ってきた同級生は面白かったですね。大学生活を通じて、レールの上でなくても生きていけるんだと確信できました。

ー早稲田ですか自由ですよね、第一文学部なら村上春樹と同じですね。そのまま西谷にUターンされたんですか
大学で楽しく勉強していたんですが、卒業して就職というよりもう少しレールから外れていようと、アメリカに留学しました。西谷の自宅が留学生の受け入れをしていましたので、海外に出たいという思いも強くて、たまたま知り合いの方に紹介していただいたユタ州のカレッジに2年間通い、日本に帰ってきました。

海外生活の2年間で、自分で意思決定してどんな状況でもなんとかするやれるというタフさが身についたと思います。いろいろな国からの同級生とふれあいましたから、多様性に対するセンスも身についたと思います。楽しかったです。

日本に帰ってきて、実家が測量の会社を営んでいますので入社し事務職をしていました。
西谷に住んでるだけで地域と関わっていないなと少し悶々としていました。その思いで周りを見ると、西谷地区の子供達がすごく減っていることに衝撃を受けました。私が小学生の時は、全学年で30名1クラスでした。20名近くまで少なくなってることに強い危機感を感じました。私の兄もそうなんですが、東京や大都市に出ていく人が多いので、結果的に子育て世代も少ない。これは何かしないといけないと一念発起して、手探りする中で出会ったのが、宝塚NPOセンターが開講していたコミュニティービジネス講座でした。

地域活性をボランティアではなく、持続性を持たせるビジネスとして確立させることを学ぶ講座でした。その講座で私なりの西谷を活性化するビジネスモデルを発表したんですが、そのプレゼンテーションに共感してくれたのが、今も活動をともにしている3人のメンバーです。2016年でした。
当時私たちが考えていた西谷の課題は、急激な少子高齢化や人口減少に伴う活力の低下と、活力低下に伴う地域の生活基盤の衰退です。生活の基盤が衰退していくと、西谷に住み続けたい人が、住めなくなる未来がくるんじゃないかと思いました。故郷に住めなくなる危機感ですね。

ー故郷に対する思いは個人差があると思いますが、何がその個人差を生んでるんでしょうか
家代々地域代々に受け継がれた物語といったらいいんでしょうか、伝統みたいなものを聞いて感じて育ったか、またその強弱ではないでしょうか。私は、西谷の物語を強く受け入れたので、故郷を意識しているんだと思います。西谷にいい思い出を持っているんでしょうね。

ーその故郷への思いを形にされたわけですね
2017年4月に、4人で任意団体の形で「宝塚にしたに里山ラボ」を設立しました。
いろいろなことに暗中模索しながらみんなで挑戦しました。
設立当初はゼロスタートですから、みんな働きながら頑張っていましたので、そもそもの活動資金がありません。しかし、西谷で若者が何かやってる、珍しいということで、助成金をいただいたりして少し動き出しました。

西谷の新米を楽しむ「ごはんフェス」を10月に初めて開催し、スタートしました。今も毎年秋に開催しています。
イベント以外にも、設立当初から西谷の魅力を発信する刊行物に力を入れています。
2018年3月に「西谷のお野菜recipe note」を発刊し、以降レシピシリーズなど継続発刊しています。
少しずつ進めてきてはいたんですが、やはり安定した活動とまではいかず、模索は続いていました。
このままボランティア的に活動していては将来性がないという思いは強かったですね。その想いを持ちながら、なんとかやれる範囲で頑張って活動していた時に、活動の場所として利用していたのがここ宝塚自然の家でした。

当時宝塚自然の家は、2016年以降の休所期間で、地域団体等がイベントで活用したり、一般者が来場できる開所日を設けたりと暫定的な開所を行なっていた時期でした。この時期に、宝塚自然の家の利活用について検討する地域の会議に参加したり、宝塚自然の家のフィールドに魅力を感じていたので、会場として積極的に利用させてもらっていました。その後、宝塚市が宝塚自然の家に指定管理制度を導入することが決定し、2022年4月、指定管理者となり、リニューアルオープンした宝塚自然の家の運営を開始しました。

ーなるほど、縁をたぐり寄せた感じですね。今取り組んでおられる活動は
この施設の維持管理と施設運営を行うことが指定管理者のメインの業務で、ほとんどのイベントは自主事業になります。松尾湿原の保全保護については、宝塚エコネットさんが活動されています。

自主事業の充実が喫緊の課題です。
ラボとしての経営的安定という側面はもちろんですが、指定管理者として来場者1万人の数値目標を掲げています。施設の駐車場が狭く70台程度、そこから計算すると来場者もマックスで200名程度の制約があります。また休所期間が12月から2月ですので、実質9ヶ月で達成しなければなりません。
自主事業を70以上開催し、この1万人の目標を初年度は達成できました。今年も土日にはイベントを開催しています。魅力的な自主事業の充実無くして事業の安定化は不可能です。

ー宝塚自然の家のオリジナルなイベントの魅力は
3つの柱があります。「食」と「自然」と「文化」です。
「食」は、体験を絡めた食を提供しています。飯盒体験とか好評ですよ。
「自然」は、もちろん松尾湿原の素晴らしさを体験いただけることが1番です。
宝塚市指定天然記念物で、サギソウ、ハッチョウトンボなど貴重な湿原の生きものを観察することができます。
子どもたちには、体を動かしてミッションをこなす体験が付加価値を生むと思います。芝を集めて薪割り体験とかですね。
街ではなかなか体験出来ません。西谷ならではの自然の素晴らしさを肌に感じてもらえたら最高です。
「文化」は、地域の人が自ら伝える文化を体験していただくイベントです。しめ縄作りとか。

親子で楽しそうですよね。地元の方に協力いただいてこれからも色々な文化を子ども達に伝えていきたいです。

この施設の最大の特徴は、「火」です。
火を使える施設は宝塚市内では、なかなかないと思います。
バーベキューやダッチオーブンを使った料理を楽しんでいただいてます。
焚き火体験を実施していますが、不思議な一体感をいつも感じています。

施設内では、兵庫県指定重要有形民俗文化財である18世紀の西谷地域の古民家「旧東家住宅」も見学していただけます。
ゆくゆくは「旧東家住宅」を活かしたイベントも企画したいと思っていますので、今から楽しみです。

宝塚自然の家にはもっと可能性があり、まだまだやれることはいっぱいあると思います。
スタッフと一緒にみんなが楽しめる企画を実現させていきます。

指定管理者として宝塚自然の家に関わって1年弱なりますが、一番学んだ事は、雇用を生む大きさです。今私たち4人は、自分の仕事を持ちながらラボの仕事に取り組んでいます。私自身は、NPO法人コミュニティリンクにも所属しています。
今は8名の方にお手伝いいただいていますが、初めて人を雇用してみて、仕事を大きくすることの素晴らしさも難しさも痛感しています。お手伝いいただいているのは、若い人もシニアの方もおられますが、皆さん繋がって交流して楽しく働いておられるのが嬉しいです。若い人の働く場所を新しく作ることができたことも本当に嬉しいです。

施設運営も初めてなので、思ったよりスピードは遅いなと感じます。しかし、少し手前味噌ですが、思っていた80%はできているかなと感じていますが、先ずは足元を固める時期だと思います。
次のステップに飛躍するために、北摂里山の同じ地域に生きる活動する皆様と連携していくことは、非常に重要な事だと考えています。
北摂里山地域循環共生圏の活動や日本一の里山・北摂里山フィールドパビリオンの取り組みに、是非私たちも参加して、地域の大きな絆を生み出すお手伝いができればと思っていますので、よろしくお願いします。

ーありがとうございました!

ーしなやかな発想と芯の野太い行動力は、まさに変化を生み出す「タフ」な人だなと感じました。
ー次回の焚火体験には是非参加して不思議な一体感を経験したいと思います。
T.Mi

 

 

兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫 氏

渓のサクラを守る会 代表 西澤 孟治 氏

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