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インタビューず

ひょうご持続可能地域づくり機構 事務局長 中川 貴美子 氏

中川 貴美子(なかがわ きみこ)氏
技術士(環境部門)/准木材コーディネーター
ひょうご持続可能地域づくり機構(HsO)事務局長
(一社)ひょうご持続可能地域づくり研究所(HsI)事務局長
こうべ森と木のプラットフォーム 事務局
(株)地域計画建築研究所(アルパック)サスティナビリティマネジメントグループ チームマネジャー


2024年12月8日に開催予定の「里山*環境*人*語る*イベント」でコーディネーターをお願いしています、ひょうご持続可能地域づくり機構の中川事務局長にお話をお聞きしました。

ーよろしくお願いします。最初に、ひょうご持続可能地域づくり機構はどのような活動をされていますか
よろしくお願いします。
地域をオーガナイズする人材を育てることを目標としています。元々の経緯としては、平成27年(2015年)に「持続的な地域創生を推進する人材育成拠点形成モデル事業」が環境省より提示され、全国3地区(兵庫県、滋賀県、佐賀県)の1つのモデル事業として採択されたのを機に、兵庫県、県内市町、金融機関等のステークホルダーの方々とともに、発足した機構です。

FIT (再生可能エネルギーの固定価格買取制度)がスタートしていた時期でしたので、大手企業様も多く立地の場として地域社会に参入されていました。外側からの力だけではなく、地域の中でもそれをグリップして活動できる地域の人材を育てようと考えスタートしました。地域が主体となって再生可能エネルギーの導入を進めることのできる人材ですね。

その後のエネルギーを取り巻く環境変化に伴い、今は一歩進めて統合的な地域の課題解決をはかる人材を育てることに注力しています。事業展開を私どもが行うのではなく、あくまでも事業展開を担う人材を育てることを目標としています。

ー機構のサイトでは「環境問題」や「持続可能な地域」という言葉が出てきますが、どのように定義されていますか
「環境問題」は、
自然環境が生み出す水やエネルギーや食料など、人も含めて生物全体が生きていくために必要なものを絶やさないようにするにはどうすればいいかという問題だと思います。
「持続可能な地域」とは、
人が単に生きているのではなく、社会的に生き続けることの出来る文化、経済などが統合的に成り立っている地域のことだと思います。助け合うことなど、人が群として心地よく生きていける社会環境と言ってもいいかも知れません。

人間は、群として生きないと難しいんじゃないかという感触は、昨今の気候変動で身近に感じられてるのではないでしょうか。この夏のスーパーからお米がなくなる一方で、農家さんとつながりがあるところは困っていないという現象も一例かなと思います。

ーそのような群をオーガナイズする人材とは、どのような役割でどのような能力のある人なのでしょうか
地域のいろんなセクターの人たちを繋ぐ人材ですね。
繋ぐためにはどう動くかを、講座では重視しています。誰に何を伝えるか、どう伝えたらいいかなども含めた詳細な事業計画を自ら作る研修や、実際に動いてみてのフィードバックなども講座では行っています。頭で考えるだけではなく飛び込む準備、背中を押す講座です。
また講座自体も広い年代の方が来られていますので、年代間のコミュニケーションの取り方も気づきが多いようです。

ー繋がっていくのはなかなか難しいと思いますが、どのようなことが大切でしょうか
地域全体を変えようとすると難しく感じるかもしれません。この地域のこの課題を解決しようと思ったその人の行動を次に繋げるサポートをして、その人の活動の輪を少しずつ広げるサポートをすることで、小さな輪がだんだん大きくなり、強弱があるいくつかの輪が重なり合って、重なりがいっぱいできて、広がりが生まれる、そして地域が変わるイメージです。

その輪を広げるためには、色々な入り口を作っておくことが大切ではないかと思います。
例えば、美味しいとか、運動になって体にいいとか、何かを作ることが楽しいとか、いろんな人が自分の興味を持てる間口ですね。間口の広さがつながりを生んで輪を広げていくと思います。そもそもが1人で自然を楽しみたいという人には広がりがありません。広がりを作るのは、自分がやりたいことには人が集まらないとできないという強い欲求がモチベーションになります。
実際に中山間地域では、地域の人たちが地域を主体的に関わり、育んでいるところも多いかと思います。

ー中山間地域いわゆる里山地域の創生という意味では、どのような課題を感じておられますか
人の暮らしが、里山が本来持っている便益と距離ができてしまったことだと思います。
里山の便益であった薪や燃料炭など日々の必要性から、自然保護、教育林、防災林など日常から遠く感じる必要性に移っていったことで距離ができたと思っています。便益はあるのですが、直接的な効果が感じづらく、担い手との距離が遠くなったことが大きいですね。

新たな担い手としては、企業のCSV (Creating Shared Value「共通価値の創造」)活動としての取り組みも、大きな担い手となるのではないかと考えています。資源として見ても里山を新たな「空間」として見る動きも出てきていますから、担い手の広がりや、新たな需要は少しずつですが出来つつあると思います。この流れをしっかりとしたものにするためには、先程お話しした間口という意味でも、小さい活動をまとめる大きな屋根が必要だと思います。

ー大きな屋根の下では何が大切でしょうか
コミュニケーションする仕掛けですね。
大きな屋根がありますよ、ではなく、さまざまな担い手が大きな屋根の下で遊べる、双方向でコミュニケーションする場を作ってあげないといけません。仕掛けないといけませんね。

一番大切なのはその屋根の必然性です。必然性がないところには人は集まりません。無理矢理つなぐ事はできませんからね。

ー担い手も含め、中山間地域を考える時に人口減少の問題は大きいですよね。その点はどのようにお考えですか
日本全体で見れば人口は減少しますよね。
全体で見ると、そうですが、地域間でのトレードオフの解消が生まれると思います。都会と地域でのトレードオフの解消ですね。都会生活のストレスを逃れて、自然環境を求めて移住する人は多いですし、今後もっと増えるのではないでしょうか。オンラインで仕事する事は普通ですし、通勤のストレスを考えると決して効率的ではないですよね。
働き方や生き方、暮らし方の選択肢が増えていますから、人口も選択肢分分散して広がっていくと思います。山間部の暮らしを見ても、物価は安いですし、教育的にもフリースクールなど、地域ならではの取り組み、選択肢があります。医療も考えてみると、健康に暮らすという視点では地域の良さもあります。

若い世代が、農地に移住するのも選択肢の一つになっているんじゃないですか、やはり食べること食べれることは重要です、といってすぐに移住も出来ませんので、体験する、都会と地域をストロークする動きが活発になると思います。

ー次はどのような活動をお考えですか
やりたい人を応援する今のアプローチを推し進めて行きたいと思います。
地域の課題解決の現状を知ったり手法を学んだりするには、経験を体感することが大切です。地域の課題解決に直結した体験をする場、気付きを生み出す場も多く作っていきたいですね。

学生時代に海外で人の思考って全然違うんだなと気付きました。
また、学生時代から、伝統工法の住宅を建てる大工さん・建築士の方向けの講座に、スタッフ兼自らの学びとして、ずっと通ってたんですが、現場でも色々な人が色々な考えを持っています。それぞれ違う部分もありますが、その違いをどう統合的に捉えて、自分のものにしていくか、が大切ではないかと感じています。

正解が一つでない時代に、選択肢がある方がいいというのが一番で、その選択肢をうまく自分に取り込めることかなと思います。
これからも地域で活動する人材を育む場に関わっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

ーありがとうございました!

ー「大きな屋根」「必然性」「人口のトレードオフ」「増え続ける選択肢に合わせて増える選択肢」など、
ー気付きの多いインタビューで大変勉強になりました。
ーぜひ北摂里山地域循環圏にもお力添えください。よろしくお願い申し上げます。
T.Mi

 

 

 

公益財団法人 地球環境戦略研究機関 プログラムディレクター 小嶋 公史 氏


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