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インタビューず

甲子園大学栄養学部教授 鎌田洋一氏 山下憲司氏 大橋哲也氏 

甲子園大学 栄養学部 フードデザイン科
近年、「食」の分野では、栄養、嗜好に加えて、生体調節作用も注目されています。フードデザイン学科では、「食品学」、「栄養学」に関する
高い見識を養い、実験・実習、インターンシップ、臨地実習(学外研修)などを通じて、「栄養士」の知識と「食品開発」の知識の融合を図り、”なぜか?”を考える専門性を身につけ、健康のための「食」を創ることに取り組んでおられます。

ー今回、宝塚の山手瀟洒な住宅街にある甲子園大学にお伺いし、地域と密着したカリキュラム設計等についてお伺いしました。

ーフードデザイン科の特色とはなんでしょう?


鎌田 洋一(かまた よういち)氏
【所属(学部・学科)】栄養学部・フードデザイン学科【職名・学位】教授・博士【専門分野:主な担当科目】食品衛生学、環境科学、食品安全論、食の安全衛生管理実習、環境と食、食品関連法規、食と地域の実践演習、生命倫理【所属学会】日本獣医学会、日本食品微生物学会、日本食品衛生学会、日本防菌防黴学会、日本細菌学会、日本アレルギー学会【学歴】1980年大阪府立大学農学部獣医学科 卒業、1982年京都大学大学院農学研究科修士課程 修了【職歴】大阪府立大学農学部(1982年9月~2007年12月)、国立医薬品食品衛生研究所(2008年1月~2013年3月、岩手大学農学部(2013年4月~2017年3月)、甲子園大学(2017年4月~現在に至る)、農学博士(1988年、大阪府立大学)
小学生の時の夢は?「獣医です。足を踏み外して食品衛生に(笑)」

6次産業化に応える幅広い知見を持つ人材の育成です。内閣府の推進する

食の6次産業化プロデューサー

の育成に6年ほど前から取り組んでいます。農業の衰退が叫ばれる今、どのように活性化するかは、生産(1次産業)のみに注視するのではなく広く俯瞰した加工(2次産業)、流 通・販 売・サービス(3次産業)までも取り込んだ視座に立って行動しなければならない、全体のストーリーがわかる見えるプロデューサーの育成が重要です。この資格を付与できるカリキュラムを構成しています。その中でも、甲子園大学では、栄養士育成には長い歴史を持っていますので、栄養士の知見をベースにしています。合わせて特徴として地域貢献に取り組むことを目指し、地域の農林水産物を生かした加工品の開発、販売までカリキュラムに取り込んでいます。
ー地域連携が重要ですね。どのように取り組んでおられますか?
宝塚の地域は、1/3の南に人と経済があり、2/3を占める北部は人口も少なくお年寄りも多い、農地が広がっている。しかし、農業は衰退している。この地に52年前に開学した本学は、食品開発に長い歴史と知見を持っています。ここで言う加工、二次産業に力を持っています。この力を宝塚地域の一次産業側に生かすことで、今まで関係を持つ三次産業事業者を巻き込んで、六次産業を生育させる人材を作り出すことは当学の強みと方向性にぴったりと合ったのです。今私たちは宝塚で「地域、宝塚を、食を通じて元気にするフードデザイン学科プロジェクト!」に取り組んでいます。宝塚西谷地区の市民農園に参画し、学生と一緒にさつま芋を栽培しています。農産物の生産を知る意味も含めてです。地域の食材の特徴を発見発掘し、どううまく料理、加工するかを学生たちがプレゼンテーションし、新製品を実際に制作し、試食、宝塚商工会議所、ソーラーシェアリング協会や宝塚すみれ発電の方にも評価員に加わっていただきご評価いただくことで、次のプレゼンテーションにつなぎ学んでいくプロジェクトです。また、今年2019年5月には、

宝塚阪急の「丼&重フェス」

の一環として、「甲子園大学・園田学園女子大学レシピ対決」と銘打ち、本学科学生がレシピを作りました海鮮丼が期間限定で店頭に並び、おかげさまで完売いたしました。

ランチパックのレシピも開発し採用されました。

ーすごいですねー。ここで宝塚すみれ発電さん登場ですね。
当学の退官されましたが河合先生が原子力発電の問題に非常に興味を持っておられましたので、宝塚すみれ発電さんの事業に共鳴し、一緒に何かできないかと言うことから、ソーラーシェアリング、太陽光発電と農業の融合に取り組み始めました。ちゃんと芋は育つのか、日陰ができますから、影響はどうなのか、ゼミの一環として実験に取り組みました。当初は芋のジャムを作って大学祭で売ったりしていました。その活動を3年前に引き継いでより活性化すべく、フードデザイン学科として「食と地域の実践演習」として取り組みだしました。私たちとしては、再生エネルギーに貢献する食材という付加価値も持てるのではないかと考えています。合わせてプレミア感のある食材がソーラーシェアリングの環境下で生まれるとなると一気に差別化できると楽しみにしています。その私たちが生み出した食材を販売まで視野に入れて加工デザインするプロセスの中で6次産業化の全体を経験する、本学独自の特色ある「食の六次産業化プロデューサー」カリキュラムを作り出しています。
ーソーラーシェアリングと食の関係性は?悪影響もあるんじゃないですか?
日光を浴びれば浴びるほどいい植物と、ある程度以上の光は必要としない植物があります。光飽和点の違いですね。各植物でわかっていますので、ソーラーシェアリングに最適な植物を植えることが可能です。問題は、植物の成分について精度のある分析が進んでいない点です。ソーラ―シェアリングでは、収穫量は問題にしますが、植物の栄養成分の分析が十分ではないのです。今は環境に優しいさつま芋ですが、農産物の成分分析を通じて、より積極的な意味合い差別化要因を見つけ出したいなと取り組んでいます。
ー今取り組んでおられるものは?
ダリアです。
ーあのダリアですか?
はい。宝塚はダリアが有名なんですが、球根もきれいなものしか流通しません。流通しないダリアを食材にするレシピを考えています。イヌリンを含有していますので、そこを中心にビジネスモデルができないかと考えています。
ー一連の流れの中での一番のポイントは?

山下 憲司(やました けんじ)氏
【所属(学部・学科)】栄養学部・フードデザイン学科【職名・学位】教授・博士【専門分野:主な担当科目】食品製造学、食品開発論、免疫学:食品製造学、食品物性論、食品関連法規、食品産業論、食品学実験、機能栄養学実習【所属学会】日本ビフィズス菌センター【学歴】1980年京都大学農学部食品工学科 卒業、1982年京都大学大学院農学研究科修士課程 修了【職歴】鐘ヶ淵化学工業株式会社(現、(株)カネカ)勤務(1982年4月~2017年2月)、オーストラリア・メルボルンの免疫研究所(WEHI)留学(1991年3月~1993年9月)、京都大学農学博士取得(1999年11月)、甲子園大学(2017年4月~現在に至る)
小学生の時の夢は?「何も考えていませんね、まあダラダラと。理系は好きじゃなかったんですよ(笑)」

核になる技術が必要ですよね。加工といっても、特色にはなりにくいところだと思います。地域性を生かすことも出来ません。販売といっても事業者を超えるものは出来ません。学生も販売できる世に認められるというモチベーションが重要です。なあなあでは何も生まれません。

やはりアピールすることが大切かなと思います。

その中で一番のポイントは、食材といいますか生産材の特徴特色を見つけ出す生み出すことだと考えます。なぜその食材がいいのか、なぜそのそこの芋がいいのかを見える化する数値化、ファクトにあると思います。ここをつかめば、全体を通底する差別化が作り出せると思います。そのためにはデータと仮説の積み上げが大切です。例えばさつま芋は光飽和点が高い植物です。しかし、あまり日光に当たりすぎるのもどうか、弱い場合どうなのか中身が変わるのではないかと予測しています。収穫量は減少するかもしれないが、他の付加価値としてアミノ酸やアントシアニン(抗酸化物質)等の有効成分等の面で利点がある可能性があります。そういった可能性の研究を通じて、ブランド化をはかりたい。そこに活路があるんじゃないかと。以前、勤務していた会社では、ノリの養殖に光合成が与える影響の研究をしていたので、それが今の研究にも繋がっている感じがします。ソーラシェアリングしたからここがいいこんないい食材が生まれるに科学のメスをいれることでしょうか。結構お金がかかるんですよね(笑)。ここまでできると横展開が可能になります。光飽和点が、さつまいもより低い大豆とか稲の栽培も考えられるんですが、今は地主さんとの話し合いで、さつまいもに絞った研究になっています。
ーなるほど、他にはどのようなトライをされていますか?
先ほどお話が出ました、地域性で行くとダリアの食材化は大学としても大きなものですね。産業廃棄物になってしまっているダリアの球根を活用し地域貢献したいと考えています。ダリアは機能性素材であるイヌリンを多く含有していますが、宝塚のダリアのイヌリンはどこが違うかを探す、その違いがあれば、ビフィズス菌に対する効果に違いがあるのではないかと考えています。その違いを生かす加工ノウハウを持つまで行きたいなと思います。今は宝塚のダリアの持つ違いを見つけ出すことに注力しています。イヌリンについてはその効果は一般化し周知されていますので、もしイヌリンの構造の違いでが差別化点を見いだすことができれば、宝塚のダリアが世間に認知されるハードルは低いのではないかと思います。一次産業側に違いを訴求できるアカデミックな力がないと本学の得意とする加工の分野での差別化は難しいなと感じています。

教科書を信じるな

という言葉がありますが、当たり前と思っていることでも実際にやってみると新しい発見があります。新しい発見は仮説を生み出します。研究というものははこれを積み上げていくことが大切です。仮説を証明できなければ訴求する力は生まれません。
ー次の一手となると


大橋 哲也(おおはし てつや)氏
【所属(学部・学科)】栄養学部・フードデザイン学科【職名・学位】教授・博士【専門分野:主な担当科目】食食品官能評価論、フードスペシャリスト論、食品加工学、食品デザイナー論、食品開発論、機能栄養学、食品加工学実験、食品官能評価実習【所属学会】化学工学会、日本食品工学会【学歴】1981年 広島大学工学部第3類 (醗酵工学) 卒業、1983年 広島大学大学院工学研究科工業化学専攻修士課程 修了、2007年鳥取大学大学院工学研究科物質生産工学専攻博士後期課程 修了、2007年 鳥取大学にて学位取得 【職歴】株式会社林原 1983年4月~2018年3月、甲子園大学 2018年4月~現在に至る。
小学生の時の夢は?「私もありませんでしたね。岡山の山の中で遊んでました。(笑)」

昨年の3月まで岡山の林原という一般企業に勤めていました。会社では生産技術の開発などを行っていました。大学では食品を取り扱っていますが、会社ではステンレス製の装置が相手でした。ソーラーシェアリングと聞いた時、初めはソーラーで生み出された電気を使って栽培するイメージを持っていたんです。今行っているのはソーラー発電した電気は売電し、それとは別にソーラーパネルの下でさつまいもを栽培しています。感覚としては他人同士が同じ場所で暮らしているようなイメージがしているので、次はソーラー発電した電気をソーラーパネルの下で行う植物栽培に利用する、例えば光の照射や温室の熱源などですが、そうした事が出来ればソーラーパネルと植物栽培が家族のような関係になると思います。
また、ソーラーが商品にまでつながる面白いシナリオが必要ですね。その為にも、何か製品が一つ完成して販売に乗れば、例えば

「ソーラが生んださつま芋の焼酎」

みたいなものが出てくると、流れが変わる、流れが生まれると思います。商品化製品化のハードルが高いので、そこはポイントですね。マーケティングのノウハウも重要ですし、商品化のハードルは本当に高い。そのため食品加工メーカーさんにレシピを出して商品化はお願いする形が今の形です。これからは説得できる訴求できるものをどう作り出し提案できるかが求められるなど、これからのところが大きいですね。ソーラー→さつま芋→レシピ→プレゼンテーションとコンペ→選定→販売のサイクルで今コープこうべさんと連携する運びになっています。芋そのままではなくデンプンまで戻して加工することも考えられますし、色々なチャレンジの中から、ソーラだからできるより優れた食材の開発を色々提案していこうと思います。
ーありがとうございました。

ゴロゴロあった恐竜からジビエシール、加賀七宝うどん、食品衛生法、写真に写った狸まで広大な彷徨の中で楽しくお話しをお聞きしました。
地域連携の中で、これからどんな活躍をされるのか、ご一緒にどんな繋がりを生んでいけるか楽しみです。ありがとうございました。
(T.Mi)

 

 

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