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インタビューず

徳島地域エネルギー 事務局長 豊岡 和美 氏

豊岡 和美(とよおか かずみ)氏
一般社団法人 徳島地域エネルギー 事務局長
地元短大卒業後、東京の企業に就職。退職後、家業である一級建築士事務所のインテリアコーディネーターをする傍ら、吉野川第十堰
可動堰化問題に対する市民運動に参画する。2003年~2007年徳島県議会議員に就任(1期)。地域の抱える多くの問題に直面し、再生可能エネルギーでの地域活性化に取り組むため、徳島県小水力利用推進協議会を結成、県内で小水力発電事業を進める。2011年徳島再生可能エネルギー協議会、2012年一般社団法人徳島地域エネルギーを立ち上げて事務局長に就任。再生可能エネルギー全般の普及に向けたコーディネートなども行う。

ーお忙しい中、東京ご出張の途中、徳島からのバスの発着地舞子でお時間をいただきました。ー本日はよろしくお願い申し上げます。プロフィール読ませていただきました。いろんなターニングポイントがおありだったと思います。第十堰可動堰の市民運動に参画とありますが、市民運動に突き動かされた元は何だったんですか?

ーそこからですね(笑)。
私は、生まれたのが、徳島県海部郡合併前の由岐町、今の美波町です。
リアス式海岸で知られた綺麗な海でした。幼稚園といいますか、小さい時から海で遊んでいましたので、海は竜宮城だなと思って育ちましたが、護岸工事で大好きな海が豊かさをなくし、漁業が衰退する様を見て子ども心に非常に悲しい思いをしました。
大好きな海をなくした思いが、自然破壊につながる吉野川の問題で自分も立ち上がろうと思った原動力でした。今行動しないと後悔するという強い意識が私を駆り立てました。

ーその後県会議員を務められましたが、いかがでしたか?ちょっとふわっとしてますが。
無力感で打ち拉がれましたね。
そもそも県議会議員の出来ることには限界もありますし、市民派議員ではなかなか思い通りに進まない歯痒さを感じていました。
でもそこで得たものがありました。政治と行政の仕組みを身をもって知ったことです。国は地方をどう管理しているのか、予算をどうすればどう動くかどう動いたかを知って、権力の配分が国と地方をつないでいるその実態に、地方自治の難しさを肌で感じました。

ーそれはいい勉強されましたね。
県会議員を1期で退いて、さて次はという時に出会ったのが、「エネルギー経済」でした。

ーエネルギーではなくエネルギー経済をいうところがミソなんでしょうね。
その通りです。
友人たちとゴミゼロの町環境の町で有名な上勝町のエコツアーに自費で参加したのがきっかけでした。
ドイツの田舎を廻るツアーでした。各地を見たんですが、一番印象に残ったのが、
ある牧場で、当時狂牛病が流行って今までの経営では生きていけない危機感から、バイオガス事業に転換した事例でした。
近隣の牧場と協力して牧場を統合して効率化を図り、そこから出る糞尿と牧草を使った小規模なバイオマスプラントを作り近隣の小学校に送る事業を行い、それ以外に当時ドイツはFITが始まった頃だったので広い納屋の上に太陽光パネルを付けて売電し、村で風車を立てて風力発電から売電し、村レベルで経済的に自立する仕組みを作り上げ優雅に暮らす様にカルチャーショックを受けました。
この事例を見た時、「これだ!これを私は日本で実現する!』と確信しました。

『自分たちが自らエネルギーでお金を産み出す仕組みを創り経営し運用することで、自分たちの村、地方が国などに依存しない経済的に自立する自治の仕組み』
『エネルギー経済で自立する自然を含めた持続可能な地方社会』
『一次産業を下支えするクリーンな基盤となるエネルギー産業を育てる』

今も変わらず私が目指しているのは、この仕組み作りを日本全土に広め、実際に地方が自立するお手伝いをすることです。

ーなるほど。で、日本に帰ってこられて、
帰ってすぐ、2011年12月産官学民からなる任意団体「徳島再生可能エネルギー協議会」を設立しました。
4人で立ち上げたんですが、ちょうどというか、環境省の補助事業で「地域主導型再生可能エネルギー事業化推進事業」というのがあるけどやってみようと応募したところ受託することができました。
失うものはなかったですから(笑)。
この事業は3年間で、名前の通り、地域で自立的に再生可能エネルギー事業をどう作るかの計画から設計、資金調達、事業化までの事例を各地で立ち上げていこうというプロジェクトでしたので、私たち生まれたての組織にはうってつけの事案でした。太陽光・風力・小水力・木質バイオマスの四部会でゼロから考え設計し自治体や住民の皆様プレゼンテーション事業を立ち上げる挑戦をそうですね100件くらいはやったと思います。
おかげさまで、再生可能エネルギー4つの分野のいいところ悪いところ実施の難しさやノウハウを勉強し積み上げる事が出来ました。
この知見と経験を生かして地域主導型の再生エネルギーの自主事業や委託事業の実施組織として設立したのが、
一般社団法人徳島地域エネルギーです。
技術やメンテナンス、コンサルタントなど15人の仲間たちと日々悪戦苦闘しています。

ーインタビュー始める前には、細かく事業のお話を聞こうと思ったんですが、ある意味意味ないですね(笑)。豊岡さんの目指すエネルギー経済を基盤とした地方自治実現のためには手法は最適なものを選べばいいので、固執されているわけではないですからね。
ーそうですね(笑)。
その地方に合ったエネルギー経済を発掘して実現へのプロゼスを設計し、プレゼンテーションして、ゴーを受け、その地方の自立に向けての最適手を積み上げ実行し、実効を上げる。
私たちは成功報酬とメンテナンス費用だけで組織を運営しています。それだけに実効を上げないと次はありません。

実際に、私たちは、
徳島県・佐那河内村に寄付(1万円/324口)を基金とするコミュニティ・ハッピーソーラー「佐那河内みつばちソーラー発電所」(120Kwh出力)を立ち上げました。寄付された皆様には5年間、佐那河内村の特産品が送られる仕組みです。

また、木質バイオマスのフィールドでは、オーストリアETA社と協業しています。
化石燃料を燃やす技術は世界有数の日本でも、木を燃やす技術や効率的な林業に関してはヨーロッパ諸国が優秀です。
おかげさまで、これまでに導入・転換調査、導入計画作成支援させていただくことで、日本全国に11箇所、合計1985kWのバイオマスボイラーが稼働しています。
風力発電の分野でも、「鳴門プロジェクト」として、鳴門市、WWFジャパン、地域NPOと共に、環境に配慮しつつ、
「自然の恵みエネルギー」利用のゾーニングマップ作成を進めるとともに、陸上型および洋上型の大型風力発電の持続可能な開発モデルづくりに挑戦しています。
最後に小水力発電では、意外と難しい課題が多いと感じています。
設置場所が限られることや、台風時等の取り入れ口の清掃日頃のメンテナンス、法的手続きの煩雑さがネックです。

そのような環境下で、私たちは、佐那河内村内に市町村単独では県内初の小水力発電施設を整備し、順調に稼働しています。2015年10月の本格稼働から2020年5月末までの平均出力は35キロワットの実績で、目標としていた28キロワットを上回っており、発電量は約20万キロワット時の実効を上げています。
そこから生まれる年1千万円程度の売電益は村内の排水施設の維持管理費に充てています。
エネルギーサイクルの良い事例ではないかと考えています。

ードイツでの出会いから10年弱を経過して、色々な経験と実績を積まれてきたわけですが、豊岡さん自身、今までの活動をどのように評価され、目標のどのあたりまで進んだと感じておられますか?
私たちの目指しているところに到達できると手応えを感じています。行ける、やれる、十分膨らましていけると実感しています。

しかしこれからはもっと多様な人もっと多くの人を巻き込んで、協力して一緒になって活動しなければ到達はしないと思っています。多くの人々に私たちの考えを伝えたい共感してもらいたいと思います。

個人が変わることは大切ですが、地方が変わらなければ「持続性」を守ることは出来ません。
子供を産もうとしても地域に病院がない、学校がない、働くところがない、緑がない、水辺がない、
このままいけば地方が破壊され消失します。個人ではなく地方が生き成長することの大切さはそこにあると思います。

緑と水と空気の流れと太陽を生かした、そして決して自然を損なわない、そんなクリーンなエネルギーを経済の中心、基盤とすることで、地方は幸せに生き成長する事が可能になる、地方に暮らす人々が豊かに生活する事が出来る。
私たちは今もこれからも、そんな地方の姿を夢見て全力で挑戦し続けます。
ー(150分の長時間お付き合いいただきました)ありがとうございました!

 

インタビューの前(すみません、初めてしっかりお会いしましたので)には、
(すみません)硬質な環境系の市民活動家な方だろうなと思っていましたが、
お話をお伺いして、目的には強靭でプロセスは極めて柔軟なプロのプロデューサーな方だなと感じました。
共生圏の中でどのようにそのお力を発揮されるか、すごく楽しみです。(T.Mi)

西谷地区自治会 二井久和氏 西田均氏 龍見昭廣氏

株式会社里と水辺研究所 代表取締役 赤松 弘治 氏

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